「ふるさとづくり2005」掲載 |
<集団の部>ふるさとづくり賞 振興奨励賞 |
自然と史跡を活かしてまちおこし |
栃木県足利市 緑がおいしい北の郷探偵団 |
緑がおいしい北の郷探偵団は、平成6年に足利市北部の自営業者によりまちおこしを目的に結成したグループで、足利商工会議所の進めるまちおこし探偵団事業で認定されたグループです。当地域の北郷地区は、足利市中心部のすぐ北に位置し、11町5000世帯からなり、80年前までは北郷村と言われ、北側は日光連山につながる山があり、幾筋もの川が流れ、南は市街地を見下ろせる高台に在り、環境が良く、遺跡も多く発掘されており、昔から拓けていた所でした。しかし、現在は大きな商業施設もなく、観光の目玉になるような物もありません。そこで、地元の人に北郷の良さを知ってもらい、話題にすることによって賑やかになり、北郷をより好きになってもらう。外に対しても北郷の良さをPRすることで北郷に来てもらいますます賑やかになる。そういうことを目指して「山や川の自然と神社仏閣、庚申塔、野仏、お地蔵様、遺跡などの史跡」を活かしたまちおこしを始めようと考えました。メンバーは、30代、40代の7人で始めましたが、現在は12名で活動しています。以下は活動記録ですが、長年にわたり実施したものが多くありますので年度は記しませんでした。 認定 足利商工会議所が進める「まちおこし事業」に活動目的、活動計画が認められ「まちおこし探偵団」として認定されました。 植樹 神社仏閣、史跡や観光スポット等に、より親しみを持ってもらい、対外的にアピールできるようにと、桜の苗木を40本植樹しました。数年前より花見ができるようになり場所柄か存在が話題になっています。 史跡コンサート 山裾の高台にあるお寺の本堂で、地元のオカリナグループによるコンサートを開催しました。事前に地元への開催の周知、市内外へのPR、報道機関への連絡等準備をし、当日は手作り行灯、各種照明等演出に工夫をして「山裾のお寺」という場が活きるような会場づくりをしました。無名のアマチュアグループにもかかわらず、地元、市内外、県外と400人以上の人が集まり、本堂に入りきれずに境内で聴いている人もいました。来場された方が楽しまれたのと同時に当日の様子は、新聞及びNHKで報道されて北郷の良さがPRできました。コンサートは夜だけでなく、日を変えて、昼間にも開き、2回行ないました。 史跡めぐリハイキング 北郷地域内にある神社、お寺、遺跡、ワイナリー等を歩いて廻り、場所ごとに説明をしました。家族連れや、グループなど多くの人が参加し、県外からの参加者も多く賑わいました。コースは1回につき約8キロで5〜7か所を見て回り、昼食時はお寺さんと共同で豚汁のサービスをしたり、史跡コンサートに出てくれた方がオカリナを演奏してくれたりして、地域一体の盛り上がりとなりました。1年1回で3回行ない、その後、某団体の少年部文化財パトロール隊より「史跡めぐりハイキング」について援助要請があり、説明の仕方を指導して、隊自身で活動できるようにしました。この史跡めぐりハイキングでは、参加した人が「こんな所にこういうものがあるとは知らなかった」「こんなに由緒あるものとは知らなかった」「こんなに楽しく歩けるならまた来よう」等北郷を再認識してもらうのに大いに役立ちました。 史跡観光マップの作成 北郷の史跡、観光名所を入れた地図を作成。神社、お寺、遺跡等の写真を入れた地図に、文化財の解説、北郷の伝説の題目(名前)等を加えて作成して各方面に北郷のPRとして配布しましたが、好評のため増版しました。また、他のグループからの借用依頼もあり、インターネットの利用も可能としたため多くの人が利用し、観光面で大いに役立っています。 地元紹介テープの作成 CATV会社の番組制作に参画して北郷の民話の映像化と、北郷の名所を紹介したVTRテープを作成しました。このテープは、民話を15枚の絵にして解説を入れたり、会員が北郷内より探し出し、選んだ、名所ポイントをカメラに収めたものに、会員が解説を付けたものです。足利のCATVで放映されて北郷のPRに役立ちました。 中学校授業への協力 地元紹介テープについて、地元中学校より教材としての使用要請があり、使われています。中学校でも「ふるさとの事を知る、学ぶ教育」という考え方があり、中学校での授業で「地元の民話について」のパネルディスカッションのパネラーに招かれたり、「北郷の歴史について講義して欲しい」との要請があり、会員が出向いて講義をしています。これは短期的なまちおこしに止まらず「北郷をよく知って、好きになり、誇りを持って他の人にも話をする」そんなまちおこしの一番基本のことに役立ったのではないかと思います。 「北の郷物語」の出版(会員の自費出版) 北郷に伝わる民話、言い伝え等を聞き集めて版画風のイラストを付けて冊子にして出版しました。会員の自費出版ではありますが当団体のまちおこし事業を通じてできてきたものであり、会員の協力もあってのことと思います。「北の郷物語」は新聞、ラジオ、テレビなどで報道されたことで、北郷に興味を持ってわざわざ遠方から見えた人もいます。地元でもお年寄りの方々からは「良くぞ書いてくれた」と感謝され、これを契機に途絶えていた行事を地区会などで復活させたり、傷んでいた建物を修理した小社や仏堂もありました。「北の郷物語」は市内ボランティアグループにより点字に翻訳され、視覚障害者の方々に届けられたり、演劇グループの脚色により創作劇「北の郷昔語り」として市内各所で上演されるなど、善意のネットワークでイメージが広がりつつあります。近く第2集の出版を予定しています。 民話を紙芝居にして地域振興 幼児からお年寄りまで多くの人たちに、北郷の良さを認識してもらい、北郷をより好きになり、誇りを持って北郷を外に向けてアピールしてもらう方法として北郷の民話を手作り紙芝居にして上演しました。紙芝居の題材は「北の郷物語」の中から、小学校の脇にあるお地蔵様の話を取り上げて、会員が絵を描き文章を紙芝居調にし、紙芝居の箱を作り、上演の練習をして昔の自転車を用意して町内の夏祭り、幼稚園では園児やお母さんたちの前で、地区の文化察や地区の歌謡コンテストではゲスト出演等、多くの場所で上演して大好評でした。夏祭りでは紙芝居と聞いて町内の人が「水飴」を準備して昔のことを懐かしみ、地域と一体となり大いに盛り上がりました。また、題材が地元にあるお地蔵様ということで、紙芝居を見た後でそのお地蔵様を見に行く子どもも大勢いたと聞きました。紙芝居の様子は、地元CATVで何度も放映され、話題になったり、貸して欲しいとか、紙芝居を作って欲しいとかの問い合わせがありました。この紙芝居を通しての活動は、人々の北郷への認識を深めることや北郷に誇りを持つことと相まって地域振興に大いに役立ったと思います。中学校より民話等含めた「北郷の文化」のゼミ開催要請があり、会員が3日間行ないました。これも紙芝居が話題になり発展したようで、厚みのある地域振興に役立っているものと思います。紙芝居については第2作の要望も多く、現在計画中です。 受賞 平成16年足利商工会議所のまちおこし事業10周年記念コンテストにおいて、「民話を紙芝居にして地域振興」で優勝しました。このコンテストは、ユニークで独創的、なおかつ地域おこし、業界振興に大きな成果をあげた団体を表彰するもので、多くの団体がエントリーした中で優勝できました。これは平成16年の1年間の事業内容とともに、今までの実績が高く評価されたものと思います。 地域のことに積極的に関わる人が増えた いろいろな活動、行事、中学校の授業等により、子どもからお年寄りまで北郷の歴史を知ったり、地域での楽しみを通じて地元に関心を持ち田舎のコンプレックスから、豊かな自然と長い歴史のふるさと、という誇りを持つ人が増えてきました。史跡ハイキングや、紙芝居で取り上げられたことにより訪れる人が増え、その価値に気づき、朽ちかけていた小さな社を改修した例もありました。 フィールドミユージアム(屋外博物館)化の下地が整う 北郷のほかのグループの人たちも、お寺にそれぞれ特徴のある花木を植えて「北郷花のお寺」としてPRしよう。桜並木と花ミズキ街路樹と紅栃の木街路樹を結んで「花並木名所」にしよう等、「史跡めぐりハイキング」から多くの人が、点から線や面の観光や、集客を考えるようになりフィールドミュージアム化の下地が整い始めました。 フィルムコミッションビジネスの芽が出てきた 北郷の自然、史跡、古く見えるもの、古いものと新しいものの混在等、観光資源としてのコンテンツの確立ができ、口コミや各種PRにより「昔」、「〇〇時代の映像」を録りたいが紹介して欲しい等の声があり、ビジネスとして有望だとの見方が出てきました。 北の郷ブランドの商品化 クッキー、納豆、豆腐、酒、パン、その他のものにも「北の郷」の名前や関連する呼称を付けた商品の開発が始まり、地域ぐるみで地域に根付いた活性化が進みました。 まちおこし気運の盛り上がり 「こんなことがまちおこしになる」と気づき、いろいろなことをする人が増えてきました。「北郷花のお寺」や「桜の並木」は会員以外の人たちが始めました。また、私たちの会も発会時は7人でしたが現在は12人と増え、ますます活発な活動が可能となり、北郷地域のまちおこし気運の高まりのリード役として寄与しているものと思います。 今後の取り組みについて @北郷地域を立体的に満喫できるフィールドミュージアムの構築に向け、「北の郷物語第2集」の出版をベースに各コンテンツのネットワークづくりを行ない、観光用のハード面(公衆トイレ・駐車場等)の確保、整備について研究を進めます。 A地域の北部に拓ける自然や社寺、古民家等の景観のピックアップをして、これを生かした映画やCM撮影の誘致・支援を行なうフィルム・コミッションについて研究を進めます。 Bふるさと意識のなお一層の高揚とコミュニティ回帰の醸成につながる「北の郷祭り」の早期実現を目指します。 |