「ふるさとづくり2005」掲載 |
<集団の部>ふるさとづくり賞 振興奨励賞 |
様々な学びから広がるまちづくり |
東京都足立区 特定非営利活動法人あだち学習支援ボランティア「楽学の会」 |
東京の北東部・足立区(人口64万5000余人)では、平成8年5月に、「様々な学びによる住みよいまちづくり」活動が、区民の学習支援ボランティアグループによって始まった。 そのきっかけは同年2月、同区生涯学習館(現足立区生涯学習センター)で「足立区民大学『生涯学習ボランティア養成セミナー』」(全7回)が初めて開催され、約70名の区民が受講したことによる。 その狙いは行政(生涯学習館)が、学びを支援するボランティアを養成して、区民の学びによるまちづくりや生きがいづくり活動の道筋をつけようとするもの。 住み良いまち、学びあうまち足立の実現を目指すNPO法人の発足と経過 そのグループが「足立生涯学習ボランティアグループ『楽学の会』」。同会は8年5月にセミナー修了者有志20余名によって発足、その後7年間に及ぶ活動経験をもとに区民主導の学習支援活動を継続発展させるとともに、区民から信頼される団体を目指して、「NPO法人あだち学習支援ボランティア『楽学の会』」として15年4月法人格を取得した。 会の理念は、少子高齢社会を迎える中で、生きがいや心の豊かさを探して、様々な学びの機会を求める多くの人々に活動を通して、「地域の学ぶ人々の支援と自分の輝きを目指す」というもの。また目的は、様々な学習支援活動を行なうことにより、「健やかで心豊かな21世紀の生涯学習社会の創造、及び学びあうまち足立の実現に寄与する」こと。 会の運営は主に会費で賄い、交付金などの経済的な支援は全くない。会員数は毎年開催されるセミナー修了者も加わり、20〜80歳代の男女約90名。ほかに賛助会員、後援会員が若干名、また顧問として生涯学習等に造詣の深い大学教授などから支援いただいている。 活動内容は生涯学習支援活動とそれを推し進める活動に分けられる。活動は着実に行政や区民から期待されるまでになってきた。活動拠点は主に区内の生涯学習施設。 学習支援ボランティアによる住み良いまちづくり活動と成果 @講座、講演会の運営を担うボランティア活動 発足時から今日まで続いている活動。学習センターが開催する講座・講演会当日の受付、司会、会場案内、講師接待など運営全般を担う活動。経験や技術よりも、受講者への明るい笑顔と元気な対応が求められる活動。年間の活動日数は10年度が最も多く延べ52日間。最近は学習センターの厳しい財政状況と担当職員の減少から開催日数が減少し、16年度は延べ23日間。活動参加者は毎回平均10〜15名。講座等の開催には当会の活動、ボランティアの存在が不可欠と言われるまでに、成果を上げている。また受講者からも感謝の言葉をいただいている。 A自主企画による講座・講演会の開催活動 区民の学習ニーズを考え魅力的な内容、社会的・現代的課題の内容を考えながら講座を企画・開催し、学びの機会を提供する中心的な活動。講座のテーマ・内容の選定から講師選定・依頼、開催日・会場の決定、開催周知のチラシ作成・配布、講座当日の会場設営、運営などの活動を行なう。この活動は経験、知識と多くの時間が必要。一つの講座には企画する者が5名前後、運営ボランティアとして10〜20名が参加・活動している。 講座の企画・開催活動は、13年1月に初めて実現したが、17年3月までに10講座を実施。全て無料講座。講座に要する講師謝金等の経費は、学習センターが共催に加わることで支援してくれている。また都社会福祉協議会ボランティア基金(当時)に応募し採用された助成金や、足立区女性総合センター(現男女参画プラザ)の区民企画講座に応募したりして賄っている。 学習センターが開催する講座等が減少する中で、区民の学びの機会を維持・増加しまちづくりにつなげていくためには、当会の講座の企画・開催活動はますます欠かせない。 B「あだち区民大学塾」の企画・運営活動 17年3月「学びたい区民」と「教えたい区民」、そして「学びを創りたい区民」による学びの場として、「あだち区民大学塾」が学習センターを会場にスタートした。この大学塾は、足立区社会教育委員会議より答申のあった「足立区における高齢者の生涯学習振興策」の提言の一つを区教育委員会が具現化し、当会に企画・運営を依頼してきた「区民主導の学習システム」。講師謝礼、運営経費は受講料で賄う。3月に実施した4講座はどれも定員を超えた。活動内容は企画、講師選定・交渉、受講申し込み、受付から受講料の収納、当日の会場設営、運営などである。超高齢社会の到来と、高齢者の生きがいづくりや住み良いまちづくりに向けて、当会の活動が行政や区民からますます期待されている。当会の今後のまちづくりに向けての中心的活動である。 C講座の企画・運営業務の受託活動 ア 「日本語ボランティアのための支援講座」の企画・運営活動 区内には2万人を超す外国人が在住している。この講座は、これらの人を対象に日本語の学習を通じて、毎日の暮らしに必要な知識を伝える「日本語ボランティア」を養成することが目的。これまでは区が実施していたが、当会の活動が評価され、講座内容の企画、講師選定・交渉、会場設営、運営業務を全て委託された。区内在住外国人の生活支援を間接的に果たせる活動。 イ 生涯学習センターの講座企画・運営活動 学習センターは担当職員の減員から講座等の開催が減少している。代わって当会が委託を受けて、自主企画した講座を開催するようになった。最近開催した講座「その時どうなる? 東京に大地震が起こる日」は、昨今の社会的課題である地震に対応できる備えを学ぶ内容として、区民の関心が高く定員(40人)の3倍近い受講者があった。また区内の生涯学習施設に指定管理者制度が導入されることにより、区民の学びの機会の減少が心配されている。この受託業務は、区民主導の学習機会の提供と学びによるまちづくりに果たす活動として、これまで以上に多くの活動が望まれている。 (1)活動の推進と会員相互の交流等を図るための活動 @前記活動や会の運営を円滑に遂行するために理事会、また運営委員会を毎月開催している。また全会員対象の月例会を毎月開催し、会員相互の交流と仲間づくり、活動に必要な研修、活動の情報提供に役立つとともに、活動に参加するためのきっかけに寄与している。 A会報「楽学ニュース」の発行 「楽学ニュース」は、発足間もない8年9月に創刊。ほぼ毎月発行し本年7月に第100号を迎える。創刊時はA4判2頁、最近はA4判6〜8頁、発行部数も100部を超えている。紙面の編集も切り張りからパソコンに変わっている。内容は会の活動情報や会員への呼び掛け、学習センターからの運営ボランティア活動の情報など。毎月の月例会開催日に発行。月例会欠席者にも送付し会の活動状況等を周知するなど、会と会員を結ぶとともに活動の拡充に寄与している。また生涯学習活動によるまちづくりに関心のある者からも期待されている。発行活動参加者は10人程である。 (2)社会教育団体やNPO法人とのネットワーク活動 東京近辺の生涯学習団体と情報交換や交流を図る活動。また80余を数える区内NPO法人とのネットワークづくりを目的とする連絡会に加入するとともに、役員団体として同会が実施する社会貢献活動の企画・開催にも積極的に参加している。 (3)現在までの活動の成果 当会の学習支援活動として企画・実施している講座は、地域的、社会的課題の内容を中心に据え、趣味や教養などカルチャー的な講座とは違った学びを区民に提供してきた。その意図するところは、区民が学びの場を通じて地域の課題を発見し、解決への力を身につけることで、「夢のある心豊かな住み良いまちづくり」への広がりを願うことである。 当会が区教育委員会と連携・協働してスタートしたあだち区民大学塾、行政などから委託を受けて共催で実施している講座等の企画・運営活動は、区民と行政との協働のモデルケースとしてマスメディアなど多方面からも注目されている。 9年にわたって積み重ねてきた、様々な学びの場を提供する学習支援活動は、その成果として「住み良いまち、学びあうまち足立」の実現に向かって着実に歩んでいる。 |