「ふるさとづくり2005」掲載
<企業の部>ふるさとづくり賞 振興奨励賞

レンズ付フィルムのリサイクル作業を通じて障害者の社会参加をサポート
東京都江東区 有限会社のびのびリサイクル所、コニカミノルタフォトイメージング株式会社

 江東区にある「社会福祉法人のびのび福祉会」の福祉作業所である「のびのび工場型作業所エコ」「のびのび共同作業所 大地・青空・大河」では、知的障害者を中心に商品用化粧箱組み立てなどの軽作業を行なっている。障害者はこれらの作業によって消費社会とのつながりを実感し、若干ではあるが工賃をもらうことで勤労者としての自覚を持ち、地域社会で生き生きと暮らしてゆく一助となっている。
 コニカミノルタでは、レンズ付フィルム「撮りっきりMiNi」のリサイクルのための分別作業を1997年から神戸の福祉作業所に委託していたが、2001年2月から同作業を「のびのび作業所(青空の前身)」へも委託開始した。2002年9月からは「有限会社のびのびリサイクル所」を介した現在の委託の形となった。これらの作業は障害者の職業訓練の場となっており、施設からは大変好評で作業量の拡大・継続を強く要望されている。
 「社会福祉法人のびのび福祉会」は、作業所利用者のニーズや生き甲斐につながる作業や就労支援の充実をめざしており、レンズ付フィルムのリサイクル作業においては次の4作業所が関わっている。
・「のびのび工場型作業所エコ」
 高所得、就労をめざす利用者の作業所。定員25名。区型・通所授産事業。
・「のびのび共同作業所 大地」
 作業を中心に目的や課題をもった生活をめざす利用者の作業所。定員40名。知的障害者通所授産。
・「のびのび共同作業所 青空」
 作業への関わりなどゆたかな生活をめざす利用者の作業所。定員19名。知的障害者小規模通所授産。
・「のびのび共同作業所 大河」
 自立をめざす中途障害者の作業所。定員19名。身体障害者小規模通所授産。
 また作業以外にも、行事や文化活動、地域行事などを加え、社会参加への支援の充実をめざしており、「有限会社のびのびリサイクル所」と「コニカミノルタフォトイメージング株式会社」はこの事業全体に賛同し、協働を行なっている。


障害に応じた適度な作業レベルのプランニング

 神戸ではコニカミノルタから福祉作業所への直接委託で、コニカミノルタの技術者が直接作業指導にあたっていた。これに対し、江東区では福祉施設ではない「有限会社のびのびリサイクル所」への委託契約を介して福祉作業所で作業を行なってもらっている。「有限会社のびのびリサイクル所」は福祉の仕事に携わった経験のある者が起こした会社で、福祉施設への委託作業の取りまとめとともに、職業訓練として障害者にどのように作業を行なってもらうかのプランニングも行なっている。会社の概要は以下の通りである。
【有限会社のびのびリサイクル所】
 2002年9月設立、2003年7月有限会社として正式に設立。
 正社員5名(内1名は障害者)、パート6名、コニカミノルタからの駐在員4名。
※パートは全員重度障害者の親で、障害者への理解と支援がスムーズであり、強力なパートナーである。
 コニカミノルタはこの会社の社員に技術指導をして作業全般と細かい内容を憶えてもらう。(有)のびのびリサイクル所では、自分たちで実際に作業を行ないながら、各福祉作業所利用者の障害の種類やレベルなどを考慮しつつ、それぞれどのように作業を進めてもらうかのプランニングを行なう。(有)のびのびリサイクル所の社員たちは、この計画に沿って各福祉作業所に直接指導をしている。この方法だと、障害者のことを良くわかった人が仕事を実際に行なう障害者の方たちの身になって計画・指導にあたるので、作業内容が高すぎず低すぎない適度なレベルに維持される。このため障害者無理なく作業を早く憶えられ、また訓練効果も上がるという利点がある。現在では、「のびのび工場型作業所エコ」で高い作業能力を発揮し、さらに高所得や就労を願ってチャレンジする意欲の高い者4人をコニカミノルタフォトイメージング(株)の正社員として雇用し、(有)のびのびリサイクル所へ駐在員として派遣している。


レンズ付きフィルムのリサイクル作業

 レンズ付フィルム「撮りっきりMiNi」は、使い切りカメラとも呼ばれており、プラスチック製の簡便なカメラ本体にフィルムが装填された形で、写真店・スーパー・コンビニエンスストアなどで販売されている。写真撮影後は、フィルムを取り出さずにそのまま写真店などに持ち込み、そこでフィルムだけを取り出して現像・プリントしてもらう。
 コニカミノルタフォトイメージング(株)では、このフィルムを取り出した後のカメラを回収し、その部品を同じ製品に再使用、または一度溶かして再利用している。レンズ付フィルム「撮りっきりMiNi」の工場は中国にあるが、日本から中国に送る前に機種別の分類と、電池の抜き取り作業、箱詰め作業が必要となる。なお、電池の抜き取りは、中国が電池を内蔵したレンズ付フィルムの輸入を規制しているために必要なのである。
 作業内容としては、作業所に運び込まれた使用済みレンズ付フィルムを、まずメーカー別に分類する。他社製品はそれぞれの製造元に送り、コニカミノルタの製品はさらに機種別に分類する。このとき、障害の重い人は大まかに分類し、障害の軽い人は見分けにくい機種をさらに分類する。次に、ストロボ発光用の電池を抜き取り、中国の工場への出荷用に本体を段ボール箱に詰める。
 電池抜き取り作業でも、障害の程度や熟練度によって作業効率は大きく違う。作業所全体では、企業で働いた経験を持つ人がほとんどいないこともあって、当初は作業に集中できなかったり、途中で帰ってしまったりする人が続出した。しかし、作業所の職員などが熱心に指導した結果、1年間で作業効率は2倍近く高まった。重度の障害者は作業所職員の介添えでやっと1本の電池を抜き取るのに対し、軽度障害の熟練者になると30分で300本以上の電池を抜き取る人もいる。また、箱詰め作業だけに熟練した人もいる。
 福祉作業所では、企業から委託される仕事のほとんどが短期契約であること、納期が厳しいことなどに苦慮しているが、その点においてレンズ付フィルムのリサイクル作業は制約が少ない。レンズ付フィルムのリサイクル作業の場合、製品が市場に出回る限りは同じ仕事が継続される必要があるため、契約は何年も続き、また納期もゆるやかである。さらに、製品の大きさや重さがコンパクトでハンドリングしやすい作業性の点、作業で汚れないといった清潔さの点、色彩的にもきれいであり、街の店頭でも製品を見かけることができるといった興味を引く点においても、知的障害者の作業に向いた製品であると言える。


企業での就労目指してステップアップ

 現在、「のびのび工場型作業所エコ」に17人、「のびのび共同作業所 大地・青空・大河」に約90人の障害者が通所されており、その作業能力は月40万個を超えるが、作業ペースはさらに向上の一途をたどっている。
 「のびのび工場型作業所エコ」では、障害者が職業訓練を行ない、次第にステップアップして企業での就労を目指している。軽度障害者の場合、実習訓練で経験を積み、実際の労働能力を判断し、前述したような企業の正社員となることも可能である。今までに6名が企業就労した。これらはみな、福祉作業所で働く障害者の励みともなっており、今後も支援を継続していく。
 作業以外では、「のびのび工場型作業所エコ」と有限会社のびのびリサイクル所、コニカミノルタフォトイメージング株式会社は次のような交流を行なっており、知的障害者が社会へ目を向ける機会を提供している。
【エコプロダクツ2004】
 2004年12月に東京ビッグサイトで開催された「エコプロダクツ2004」に、(有)のびのびリサイクル所社員の同行で「のびのび工場型作業所エコ」で働いている方々が来場し、コニカミノルタブースで見学・クイズ参加・プレゼント・記念撮影を行なった。
【コニカミノルタさくらまつり】
 2005年4月に東京都日野市で行なわれた「コニカミノルタさくらまつり」に、(有)のびのびリサイクル所社員の同行で「のびのび工場型作業所エコ」で働いている方々が来場した。
【実業団野球の応援】
 2004年9月、2005年4月に東京ドームで行なわれた青年実業団野球の試合で、コニカミノルタチームの応援に(有)のびのびリサイクル所社員の同行で「のびのび工場型作業所エコ」で働いている方々が参加した。
 これら以外にも、レンズ付フィルムのリサイクル作業に携わっている福祉作業所の利用者は、街の中でレンズ付フィルムやコニカミノルタロゴを見つけることで、自分たちと社会とのつながりを実感としてとらえる機会を得ているとの報告も受けている。