「ふるさとづくり'88」掲載 |
姫路の街並みを考える |
兵庫県姫路市 姫路の街並みを考える会 |
「姫路の街並みを考える会」は、姫路に住み、あるいは仕事場を持つ有志市民が、姫路の町を良くするために、行政まかせでなく市民の知恵を持ち寄ろうと、1984年2月に発足した。 姫路は人口45万を数える兵庫県西部の中心都市でありながら、都市づくりが遅れており、都市文化も低調だといわれ、また観光客からも城のほかには何もないといわれている。さらに近年の産業空洞化の波が押寄せるなかで、臨海工業地帯も活気を失い、街並みとか都市文化とか悠長なことはいっておれないといった風潮もみられる。こうした状況に対して有志が集まり、その専門分野を生かしながら姫路の街をよくするために研究し、市民や行政にアピールしていく会の活動はますます貴重なものとなっている。 さまざまな分野の人々が集まって 会員は約25名で、建築家、大学教授、経営者、デザイナー、画家、陶芸家、手芸家、詩人、作家、公務員などさまざまな分野の第一線で活躍中の人びとが集まっており、街並みを建物や街路といった物的なものとしてとらえるだけでなく、市民の暮らしや文化のあり万と密接に結びついたものとして考えようとしている。年齢階層も30代〜60代と幅広く、また女性も5人参加しており、会の活動に広い視野と多彩な視点を与えている。 なお、会費は年3,000円で、会の活動はほとんど会費によっている。 会の主な活動は、例会、機関誌の発行、見学旅行、市民や行政への具体的な提言などである。直ちに成果の上がる華々しい活動とはいえないものが多いが、街並み・街づくりは息の長い地道な活動と考えている。以下それぞれの活動を紹介する。 例会活動 2カ月に1度、例会を姫路短期大学の同窓会館で開催している。会の内外から、ときには遠方からも学者・専門家・行政担当者の講師をお願いして問題提起をしてもらい、そのテーマについてみんなで討論している。討論は活発で例会の時間では足りないことが多い。 いままでのテーマは次のとおりである。 「姫路の地場産業について」 「姫路の交通計画について」 「地区計両制度について」 「小利木街の街並みについて」 「姫路と姫路城」 「姫路城周辺整備の提言について」 「姫路城周辺環境調査の報告」 「茶室について」 「町づくり最前線・神戸・八王子・湯布院・倉敷・大山町・町田」 「姫路とそのみどり」 「姫路城跡整備構想について」 「彫刻家・流政之氏をかこんで」 「ジャンジャン大黒遷座てんまつ記」 「姫路市の都市整備計画について」 「わがふるさと論」 「暮らしの舞台―15年後の姫路」 「詩人と都市」 「テクノポリス計画について」 機関誌の発行 機関誌「いらか」を年4〜6号のペースで発行している。発行費用は独立採算制とし広告費でまかなっている。内容は、会の活動の成果の発表、会員の提言、全国的に著名な専門家の提言、市民の声などである。発行部数は約1,000部で、姫路市内を中心に主要な行政担当者、議員、有職者をはじめ、一般市民にも広く配布している。これらの方々やマスコミからの反応もあり、姫路の街並みや町づくりに関するユニークなメディアとして一定の認識を得ている。 見学旅行 会員のなかには個人的に各地の町づくりの例を見ている人も多いが、昨年から会の活動として見学旅行を随時計画している。会の活動として企画することによって、資料も事前に十分用意し、現地でも街並みや町づくりに活躍されている方々の話を聴けたり、個人では見せてもらえない所も案内してもらうなど得るところが大きい。また会員は多忙な人が多いが、こうした機会に時間のたつのも忘れて議論することも目的の一つである。いままでに平福と竹原を訪問したが、近く高梁方面に見学旅行を計画している。 計画・提言活動 会としてあるいは有志全員でその時々の重要問題について市民や市長をはじめとする行政当局に提言していくことも垂要な活動である。いままでの主な活動として次のようなものがある。 「城西保全提案」 これは会代表者の出田の提案であり、まちなみ改善提案コンペで全国一位に選ばれたものである。小利木町など昔の街並みのおもかげと界隈性を残した街並みと船湯川や中堀のウォーターフロントの改善を提案している。これがひとつのきっかけとなって地元でも町づくりの気運が高まり、会も住民との懇談会や調査活動などで住民運動に協力した。 「城周辺・魅力ある街づくりを目指して」 姫路城周辺整備が大きな課題となり、市当局も整備計画に取り組みはじめたため、会でも議論を重ね、出田と松本がまとめた。この提言の一部はその後策定された姫路城跡整備構想計画に生かされている。 このほか「市景観条例について」「市制百周年記念事業について」「図書館建設について」「大手前通りのカラーコーディネイトについて」などの提言活動を展開してきた。姫路の町を良くするという会の目的のためにも、こうした計画・提言活動を今後も一層活発に展開していきたい。 また計画・提言活動の基礎となる調査・研究活動も必要であると考えており、その1つとして街並み調査を企画しようと考えている。 |