「ふるさとづくり'93」掲載 |
<集団の部> |
心の国際化をめざして |
静岡県・グローバル文化交流協会 |
地域のあらまし “富士の白雪ノーエ”の農兵節でも知られる我が町三島は、富士の雪解け水が市内のそこここに湧き出て、その美しい景観は訪れる人を思わず魅惑してしまいます。 人口約106,000人、世帯数30,500戸の商工業都市三島は、その歴史も古く、かつて江戸時代には、東海道五十三次の宿場町としても栄えました。 気候温暖、風光名媚、さらに新幹線三島駅の開設以来、首都圈への交通の利便さも加わり、人口は急増し、数年前ついに100,000人を突破してしまいました。それと共に宅地造成も進み、周辺の小高い山々は次々と宅地に変身しています。 “水と縁と文化の町”をモットーとした我が町三島も、開発と自然保護とのバランスが、これからの大きな課題となることでしょう。 活動のはじまり 昭和61年、三島市で英会話を学ぶ主婦達の発想で、この会は発足しました。当時、静岡県東部には、中部、西部に比べて、自主的な女性達のグループ活動が、あまり見られませんでした。そこで、ある程度子育てを終えた女性達が、自分達の勉強も兼ねて、地域のために何かやろうということになりました。 たまたま三島には、国立遺伝研究所や日本大学があることから、外国人の出入りも比較的多く、自分達の学ぶ語学も活かしていこうということで、地域に住む人々の心の国際化を目指して、会の名前も“グローバル文化交流協会”(略してGIA)と名づけました。 集団の個性 会の目的は、その名のごとく、地球的広い視野に立ち、国家、民族、宗教、年齢、性別などのあらゆる壁を超え、地域に根ざした活動を通して、互いに学び合い、磨き合い、さらには地球人となることを目指す、というものです。会員は、小学生から高齢者に至るまで幅広いのですが、主となって活動しているのは、比較的時間の余裕があって、やる気満々の女性達です。 新興住宅地の増加に伴い、他所から移り住む人も増え、新しい土地での新しい人間関係を求めてこの会に参加する人が多く、帰国子女遠の参加も多く見られます。事務局は三島にありますが、会員は静岡県東部全体に広がり、会員数は200名前後です。1年毎に入会更新の手続きをし、会は会員達の年会費で運営されています。 広く会員達の意見を取り入れ、協力も得ながら様々なイベントを企画しています。イベントは、会員以外の人々にも呼びかけることを原則としています。 活動の内容 この会の活動は、定期的活動と不定期的活動との2つに分けることが出来ます。 ★定期的活動 ○雑誌「DOOR」の編集と発行(年3回) ○居住外国人向けローカル情報紙の発送(毎月) ○会員宛おたより「GIAmail」発送(毎月) ○外国語教室……「英会話教室」(月4回、6クラス) スペイン語教室(月4回、1クラス)講師はいずれもネイティブ・スピーカー ○日本語教室(月2回、3クラス)会員のボランティアによる ○「Cookingサロン」(毎月) 外国人講師による自国の料理紹介 ○「日本文化ことはじめ」(年4回) 日本人による日本文化の紹介 ○「グローバルピクニック」(年3回) ピクニックを楽しみ、野外での交流 ○「ビーチクリーンナップ作戦」へ参加(年2回) ○「チャリティー&リサイクルバザー」(年1回) 資源を大切にを目標。収益金は情報紙発送費用と、恵まれない人達への援助金にあてる ○「ホームステイの受け入れ」(毎年秋) 50歳以上のシニアを対象としたアメリカのホームステイプログラム「シニアーズ・アブロード」の企画で、毎年秋に来日するゲストを受け入れ、人間対人間の交流を図る。 人生経験豊かな彼等との交流は大変意義深いものがある。春には、日本から訪米も可能。 ★不定期活動(過去6年間の主な物) ○「シンポジウム」 外国人パネリストを交え、時に合ったテーマで各種シンポジウムの開催 ○「民族衣装でふれあいタイム」 各国の民族衣装を交換し合い、試着し、衣装を通してその国の文化を学ぶと共にコミュニケーションの格好の場となった。 ○「世界のティータイム」 居住外国人にそれぞれの国のクッキーを焼いてもらい、食を通しての文化交流。 ○「お茶会」 日本文化を外国人に紹介。 ○「講演会」 GIAの総会などと組み合わせて、外国人講師による講演会開催。 ○「海外研修旅行」 “百問は1見にしかず”で実際に海外を体験しようと、観光よりホームステイを重視した研修旅行。訪問国は、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドの3カ国。 ○「世界のパフォーマンス」 居住外国人による各国のダンスや音楽の披露と交流。 ○「Watching地球」 「ドイツ、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、トルコに焦点を当て4回に分け、各国の人による自国の紹介。 ○「バイリンガル環境かるた」作り 深刻な環境問題に数年前から取り組み、牛乳パックやアルミ缶の回収、ショッピングバックや箸の持ち歩き運動、アースデーに市内のごみ拾いとチラシを配るデモンストレーション、沼津市千本浜海岸の清掃などをやってきました。そんな活動を通して思いついたのが、環境をテーマにした標語をかるたにすることでした。日常生活の中で、誰もがちょっと気をつければ、地球にやさしく出来ること50を語呂のよい標語にし、日本人ばかりでなく、世界中の人々にも使えるよう英語も併記し、その名も「バイリンガル環境かるた」と名づけました。すべて会員達による手作りです。完成以来1200セット以上が全国に広がり、イギリス、ドイツ、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドなどの海外にも渡っています。現在、市内の学校を訪問し、紹介しています。遊びを通して、言葉の勉強もしながら、環境問題に目を向けてもらえれば、と願っています。 以上のような活動を通して苦労したことは、適当なイベント会場がないこと、参加しやすい曜日と時間の設定、費用の捻出、外国人にも魅力のある内容の企画などです。大きなイベント費用については、行政側の協力を得られたこともありました。あとは、その都度工夫していますが、完全な解決策はありません。私たちのようなボランティア活動に対する、行政や地域の企業のご理解とご支援がいただけたらと願っています。 今後の展望 いろいろなことが地球的規模で考えられる時代を迎え、もはや国際化は免れません。しかし、日本人の個々の心にその準備は出来ているのでしょうか?マスコミを通して世界を知ることももちろん大切ですが、それだけでは充分と言えないと思います。人間対人間の交流によって生まれる心の国際化こそ、忘れてはならないものだと思います。 真の国際人とは、まず自国を知り、その上で他国を理解し、お互いに認め合える人と言われます。この意味においても、人と人との交流を大切にし、相互理解を深める民間の草の根国際交流は、意義あるものと思われます。GIAではこれからも一層深刻化する環境問題に長い目で取り組むと共に、各種文化活動を通して、地域はもちろんのこと、広く世界の人々との交流の輪を広げていくよう努力するつもりです。 |