「ふるさとづくり'94」掲載
<集団の部>ふるさとづくり奨励賞

国際化に対応した住みよいまちづくり
秋田県・秋田市 秋田県国際交流をすすめる婦人の会「わぴえ」
 「先生、うちのバッチャ(ばあちやん)はこう教えたけど、ちょっとTVと違うよ」とRさん。「“キレイクナイ”は間違いネ。今日はじめて“キレイジャナイ”が正しいとわかりました」と目を輝かせるのはEさん。秋田県南部の中核都市の1つ、湯沢市での日本語教室は、毎週水曜日ともなると近隣の町村からもフィリピン、チリなどの外国出身の主婦たちが集まってきて、教室は活気にあふれている。
 いま外国人登録者の数は120万人を超える時代。その中にあってわが秋田は2、000人台とけっして多い数ではない。が、就労目的などの外国人が集中する首都圏や産業工業地帯と在住形態がやや違って、ここでは鉱山学部を擁する秋田大学をはじめ、ミネソタ州立大学機構秋田校、その他、教育機関に席を置く外国人学生や教師、研究者たちが多い。と同時に、目立たない存在ながらも確実に増えているのが、農村地帯に多くみられる国際結婚による外国出身の女性たちであろう。
 “こうした人たちにとって、わが秋田は住みよい地であろうか?”
 “国際化時代にふさわしい開かれた秋田になっているだろうか?”
この問いかけをもとに、私たちはここ数年活動の方向づけをしてきた。
 「国際婦人の10年」最終年(1985年)に誕生した「わぴえ」は、現在では仲間も200人から450人へと増え、その活動も本部事業に平行して巣北、中央、巣南の3支部において、それぞれの地域性を生かしながらすすめられている。しかし、この9年の間には、これまでのいわゆる「友好交流型」から、さらに踏み込んだ「互いに生活者としての協力」が求められる時代へと移り、したがって、交流の形もイベント的なプログラムから、いまでは日常的な隣人としての付き合い、支え合いが重視されるようになってきた。
 それらの活動の中からいくつかの例を紹介したい。


「わがまちの国際度チェック」

 外国人にとって、秋田の生活環境がどのくらい整備されているかを調査したもの(なお、実施の過程では、外国人のニーズを把握するために事前に在住外国人にアンケート調査を行って項目づくりの参考にしている)。
 調査対象は、主としてハード面について駅、学校、市役所、病院、消防、警察、公民館、ホテルなどの27種類、延べ900の施設。チェック項目としては、◇外国語による表示や案内板、資料があるか ◇外国語での対応、アナウンスができるか ◇外国人の諸手続等に対応するサービスができるか ◇国際公衆電話の有無…など。
 全員が住む県内のほぼ全域にわたって、4ヵ月の調査期間をかけて1989年4月にその結果をまとめた。
 さて、調査結果は一言でいえば“目立つ未整備”
 私たちは所感として次の事項を挙げて、それぞれの関係機関に対応を求めた。
 @公的機関のうち、例えば市役所、警察、公民館などは、私的施設の例えばホテル、レストランは、観光地に比べて国際化への対応が遅れている。
 A鉄道に関しては、一つの県の観点では計れないものがあり、JR側の国際化へのより一層の努力を期待したい。
 Bバスについては、路線表示に番号を併記してはどうか。
 C外国語表示に限らず、図やマークなどによる解決を試みてはどうか。
 D現段階でも外国語を理解できる人がいる施設機関は、とくに外国人のための人員が配置されてなくても対応できている。新たな人員配置を考えるだけでなく、職員の教育など現体制の体質を改善する努力も必要である。
 この調査は、時代の要請に応えるタイムリーなものとして地元紙でも大きくとりあげられて人々の関心を呼ぶと共に、該当する機関、施設などもその後徐々にではあるが整備が進められており、この調査のもたらす確かな手応えを感じている。
 今後もこの事業のフォローアップを続けるとともに、「国際化に対応する秋田のまちづくり」について再検討が必要とも考えはじめている。


「わぴえ」日本語ヘルパー事業について

 前述の「わがまちの国際度チェック」がハード面の整備を促す事業とすれば、日本語ヘルパー事業は、ソフト面での外国人受け入れの大切な条件整備の1つといえる。
 農業県の秋田では、後継者が結婚相手を外国に求めるケースも少なくない。縁あってこうした青年と新生活を始めた快活な彼女たちも、住むほどに直面するのが言葉の壁。少し慣れてはきても「日本語話せるけど、漢字が読めねエ」と、秋田弁はかなりいけても問題は読み書き。「車の運転免許をとって、子供を保育所に送りたい」「学校からの連絡文書が読めない」「職場でみんなの話に入れず淋しい」……。
 こうした声に応えようと「わぴえ」では、ことに郡部に重点をおいて日本語教室を展開しはじめている。まずは冒頭の例がその教室。湯沢市を中心に嫁いできたフィリピン女性の支援組織「サンパギタの会」の共催によるもので2年目に入った。
 講師陣には、日本語教師の資格を待ち「わぴえ」会員でもあるSさんを中心に、トレーニングを受けた複数のボランティアがローテーションを組みながら秋田市から毎週通っている。
 そしてこの5月、新たに教師養成のための「日本語教育講座」を同市において開設。この事業のめざすものは、日本語の学習ニーズに対して“いつでも、どこでも学べる”というきめ細かい態勢の整備であり、それには地元講師の養成が急務と考えている。
 いま私たちは湯沢市にはじまったこのプログラムの実践をもとに、県内の他の地域でも、同じようなニーズに応えようと調査、検討をすすめている。その一方で、財政基盤の弱い一民間団体では支え切れない状況と、事業の意義を訴えながら関係する行政機関、国際交流協会などに理解を呼び掛け、官民の協力、連携の望ましい形をつくり上げようと努力しているところである。


その他の「共生」プログラム

(1)「どんもどんも・こうかん会」
 外国人学生の生活を支援しヽ県内の留学生、研修生などが知り合う場にしようと年2回開催している。会員を中心に広く市民から寄せられる生活用品の破格値のバザーや家具、家電製品、自転車などの提供情報など…。大変、よろこばれている。
 その他、いつでも求めに応じて協力する態勢で窓口を設け、利用されている。
 *「どんもどんも」とは「どうも」の秋田説り。「こうかん」は交換、交歓など。
(2)「わぴえ・奨学プラン」
 県内の私費留学生(女性)に対して助成し、友好と相互理解を深めようとするもので、今年度は4人が対象。
(3)「わぴえ・パートナー」活動
 秋田に住んでいる外国出身者(学生、国際結婚などの一般も合む)と「わぴえ」会員が、個々の組み合わせによって家庭的な日常の交流を行うもの。同一の組み合わせ期間は通常1年間。個人で対応しきれない相談、問題などが生した場合は会として対応し、さらには県国際交流協会など関係機関の応援も求めることになる。
(4)外国人向けに情報の提供
 外国人にとっての情報は偏りがちで、ことに地域における催しや生活情報などを求める声も多い。「わぴえ」では、日ごろの触れ合いの折々に伝えているが、今年度から会報の中に「ひらがなで、こんにちわ!」と称する外国人向けのページを設けて、情報提供とコミュニケーションづくりを試みている(今のところ、日本語表記で漢字にはひらがなルビ)。
 *以上の「共生」プログラムをすすめる上での基礎資料とするために、現在、留学生や外国人主婦らを中心に生活状況などについてリサーチを行っている。


事業を支える活動として

 会費収入(年金費=5、000円)による運営費を補うものとして、チャリティ、募金活動などを行っているが、なかでも、独特でユニークなのがチャリティ商品「わぴえ・フローラ」。会員手づくりの皮や布(切れ端)による造花で、さまざまな機会をとらえては販売し、この「わぴえ・フローラ」を通して国際協力への理解と参加を呼び掛けている。現在、新商品の開発に担当者は頭を寄せ合っているところ。
 なお、こうした活動などから得たもので「わぴえ・基金」を設けており、それを基に安定的な財源として奨学金や国際協力活動などに当てている。
 全活動は生きた生涯学習の場であり、また、「世界のグローバル化」、「秋田の国際化」を身を特って感じる責重な機会でもある。私たちは、こうした時代に生きる一人として、また「わぴえ」の会員として、その役割は何かを常に自問しながら身近なところから声にし、行動に移したいものと考えている。
 まずは「開かれた秋田づくりを!」が合い言葉。