「ふるさとづくり'95」掲載
<集団の部>ふるさとづくり大賞 内閣総理大臣賞

子どもの夢を育む童話の里
大分県玖珠町 童話の里「わらべサークル協議会」
 美しい山々、テーブルマウンテンの連なる大自然の懐に抱かれた玖珠町。この町には子どもたちの夢をいっぱいにふくらませてやりたい。虹色の夢、果敢な冒険心、苦しさにも挑戦する勇気ある子どもたちに。そんな果てしないロマンを追いかけている人がいっぱいいます。いやそんな夢を実現しようと、今もこの玖珠町では子どものための町づくりがすすめられているのです。


45回になる童話祭

 玖珠町の町づくりが「童話の里」づくりと言われるようになったのは、昭和55年国土庁によってモデル定住圏構想の一環として「童話の里」に指定される7〜8年前のことだったと思います。
 しかしホントはもっともっと以前からのことで、実は日本のアンデルセンと讃えられる久留島武彦先生の童話行脚50年を記念して始められた昭和25年の第1回の童話祭以来のことなのです。
 今年で45回を重ねた童話祭なのですが「子どもに夢を」をテーマに、子どもたちの未来を大人も子どもも一緒になって考え、充実していこうと年々町民の熱意と寄せ合ったアイデアを形にして、4つの会場にイベントを組み、盛大に開催されています。


子どもと共に楽しむ

 森三島会場では久留島先生の口演童話の伝統を受け継いで、寺院や茶室を会場に「童話の家」が展開されます。静かな町並みの奥に点在するお寺で、じっくり親子が童話や人形劇、かげ絵を楽しみます。三島公園では緑陰童話や手づくり広場で、青年が老人の力も借りて子どもと竹馬、竹トンボ、竹笛づくりなどに夢中です。
 おとぎの山「つのむれ」では通行手形をもったファミリーが、仲間が、「すずめのお宿」「おさるのかごや」「竹うま関所」「民話の広場」「針の耳関所」など10カ所の関所をめぐりながら中世の城跡、焼不動尊など史跡をめぐる童話体験の「つのむれおとぎ探険」が展開されます。
 わらべの館の大広間では「おとぎ劇揚」が催され、童話、人形劇、かげ絵、絵ばなしや童謡、コーラス等で終日にぎわいます。
 三島公園、グランドー帯では子ども太鼓フェスティバル、郷土民謡、子ども演奏会、郷土芸能「楽」の競演、童話仮装みこしがねり歩くなど、5月4日は26種、5日は28種のイベントが開催されるのです。
 これらのイベントや行事を組み立て、支え、演じているのがふるさとの中高生を含む、子どもと一緒になって楽しもう、というボランティアの人たちなのです。
 こうした人たちによる行事が童話祭のときだけでなく一年中いろいろな団体やグループによってなされ、実践されているのです。
 例えば15年も続く毎月の「童謡学校」や「童話の里から童話作家を」とはじめた「つのむれ文庫」の12年も重ねた「創作童話集」の発行。さらには語り部「ひこわの会」による「日曜童話会」などの日常活動が根付いてきました。
 まさに、わが町は、子どもを愛し、子どもとともに夢を追いかけ続けているボランティアの里なのです。


点検そして新しい試み

 どんな行事でも20年〜30年も回を重ねればどうしてもマンネリ化し、くたびれも出てきます。
 昭和54年、第30回童話祭を迎えるに当たって、童話祭の楽しい催しを担当していたグループやサークル、青年団、商工青年部などの若者たちがこれまでの童話祭行事を見直し、チェックしてみました。
【チェックの視点は次の通りです】
@久留島精神の見えるもの、感じられるものはどれか。
A子ども文化を育て、創り出そうとしているものはだれか。
Bふるさとの歴史や文化がにおうものはどれか。
の3点から4つの会場の行事を総点検、討議を重ねる中で、子どもの声も聞きながら、全町民のねがいも結集せねばとシンポジウムを開催しました。そして新しい試みを開始したのです。


子どもに仲間と自然、文化(昔ばなし)をとりかえす試み

(1)童話が体験できる場づくり
―童話の山の―「つのむれ」にいどむファミリー大会の実践―
 子どもたちが仲間と一緒に、美しい自然の中で挑戦し、冒険しての遊びは、まさに童話を体験することであり、主人公になりきった感動体験でもあるのです。
 私たちは、この童話体験の場づくりに中高生の社会参加を引き出し、若々しい魂の発動を地域へ向けさせ、地域の人、自然、歴史とふれあわせ、生活領域の拡大を図りたいと考えました。
 昭和55年3月、童話祭を他の町の観光祭や温泉祭と同じ発想ではなく童話を軸とした子どものための祭に構築したいと、若者たちは燃え始めました。そしてまず始めたのは、すぐれた自然と中世の城跡や焼不動尊、針の耳などの歴史的文化を残す童話の山「つのむれ」にいどむファミリー大会の実践です。(つのむれとは角埋山のこと)
 童話の里づくり運動は、たしかに町の生活基盤を確立し、物的条件も整備しなくてはなりませんが、同時に「地域の教育力」を回復し、結集する運動でなくてはなりません。玖珠の子どもたちにとって玖珠の自然や歴史が、文化が、ひとつの博物館であり、住民すべては生きた展示指標でもあるのです。
 親と子が、あるいは仲間が助け合い、支え合い、励まし合い、汗を流し合って「つのむれ」にいどむとき、「つのむれ」のもつ優れた自然と文化史跡から受ける感動とそこでの弓大会やウソ替えの伝統的行事や童話、人形劇、絵ばなし、ハーモニカ演奏などおとぎの国的催しは、子どもに美しい夢と感動を与えるに違いないのです。そしてそれを創り出す人との交流は人の温もり、ふるさとの優しさを味わう場ともなるはずです。
(2)高校生のエネルギーを集める―ひろげる
 「つのむれおとぎ探険」の実施にあたっては登山道の整備や案内板の設置、さらには内容を充実させるための準備など細かな活動が必要です。しかし今は何もなくてもこのおどけた史跡の山「つのむれ」と若者のエネルギーが何かを生み出してくれることを期待して「つのむれ」全山に10の関所を設け、関守を配置、それぞれの関所での催しを展開することにしました。が、それには高校生のボランティアをお願いするしかありません。ボランティアは本来自発性を原則とするものなのですが、それには綜合的なゆさぶりやはたらきが必要です。初発のはたらきかけとして、私たちは玖珠、森両高校の校門に立ち、下校時の高校生ヘチラシを配布し、協力のよびかけを直接試みることにしました。

【玖珠地区高校生のみなさん、力をかしてほしい】
 今年もまた童話祭が近づいてきました。この童話祭を、玖珠の大切なひとつの宝とし、みんなの愛情と誇りでやりとげたいものです。昨年から「童話の里づくり」がさけばれ、多くの大人たちが、それぞれの立場で苦しい条件を乗り越え、知恵を出し合い、力を寄せ合って具体的実践活動をすすめてくれています。童話の里づくりは、明日を創造する子どもたちが生き生きと育つための地域づくりでもあるからです。
 ところが、この地域づくりに、これまで人生で最もエネルギーと発想豊かな高校生のみなさんの力が加わっていなかったことを残念に思っているところです。単に催しものを見て回るとか、参加するという消極さでなく、それ以前の準備の段階からその持てる力で参加し、創造し、やがて日常的地域活動へと発展してくれることが、ホントの町づくりになると思うからです。(中略)
 私たちは他の地域の若者の力ではなく、このふるさと“玖珠”の若者の力がほしいのです。特にみなさん高校生の若いエネルギーがほしいのです。ふるさと“玖珠”を愛し、弟や妹たちを愛し、健やかな成長を願ってくれる高校生のみなさん、「ふるさとづくり」に力をかしてください。(後略)

 当日両高校から2キロメートル以上離れた森公民館に集まってくれた高校生は68人、計画と準備をすすめ、彼等を迎えた若者はすべて童話学校を開設したボランティアです。高校生を含めて100人近い若者たちは、まずホールでの出会いの集いからゲーム、フォークダンスで交流しながらグループをつくり、班別会議で具体的活動に入ります。どの顔も輝いて見えます。子どもたちを狂喜させるに足る趣向が論議され、分担が決められます。まさにエネルギーのそして優しさの結合です。
 すずめの宿のデッサンが、通行手形の関守印がデザインされます。きびだんごの作り方配り方が相談されます。これまでの童話祭の見物人からその執行の主体への変身は、そのまま童話祭の新たな飛躍なのです。
 彼等は4月29日、5月3日の祝日にも集まって班別活動を展開。登山道の草刈り、大たれ幕のとりつけ、すずめの宿やおさるのかごつくり、きびだんごの粉集め等々、幸い中学生も手を出しはじめました。中・高生の社会参加が躍動します。心をはずませて美しい汗を流す若者たちのエネルギーに母親たちが知恵をかし、父親たちが力をかしはじめます。
(3)ボランティアの輪をひろげる
 つのむれおとぎ登山における高校生ボランティアは実質80人を超えました。そしてその活動ぶりは多くの参加者と実施担当者を感激させるに十分でした。1000部準備した通行手形が午後3時前にはなくなってしまうほどの盛況で、子どもたちや家族連れの参加者は整備不十分な「つのむれ」の新緑かおるおとぎ道を、緑のトンネルをくぐり、ボランティアの高校生ともふれあえました。「すずめの宿」の催しに心をおどらせ、高校生のかつぐ「おさるのかごや」に喜び、竹馬に挑戦したり、じっくりふるさとの民話や伝説に耳を傾け、緑の陰からの指人形の語りに歓喜したり、針の耳をくぐり桃太郎や挑子さんから「きびだんご」の接待を受ける等、終日おとぎの山「つのむれ」は人、人、人の行列とハーモニカやアコーディオンの音に合わせて歌う歌声につつまれ、童話体験の場としてわきかえりました。
 この行事で、「やった」「やれた」という成就感は参加者と高校生に響き合い、その後毎年繰り返される「つのむれおとぎ登山」にも、たえることなく、あれから14年、後輩に引き継がれ、ボランティアの輪を広げてくれています。
 なんと平成6年第45回童話祭では101人の中・高生のボランティアがわらベサークル協議会の若者たちや成人グループと一緒に「童話の里づくり」の具体的実践者として「つのむれおとぎ登山」や「童話の家」「おとぎ劇場」「竹トンボ広場」等の執行に活躍してくれているのです。
(4)おとぎ登山の定例化と「つのむれ会」の発足
 昭和55、56年の第31、32回童話祭で実施した「つのむれおとぎ登山」は毎回1000人を超える参加者で童話祭を盛り上げることができました。
 この実践が契機となって、地域の大人たちは高校生のボランティアにこたえようと「つのむれ会」を結成しました。「おとぎ登山」の実施者や参加者が中心になって「つのむれの自然と文化を守り、歴史を学び、つのむれの諸行事を振興することで、子どもたちに健全で豊かな心を育てよう」と56年8月23日、126人の会員で発足しました。
 その後、年を重ねる毎に会員も増加し、年間700円の会費納入者は平成6年の現在243人で、定例的に学習や活動を続けています。この間、町や県のつのむれ遊歩道整備事業によって、登山道が改修されたり、角牟礼城の発掘調査がなされたり、おとぎ道としての面目を一新するまでに「つのむれ」が親しみやすい条件を整えてきました。小学生から70歳を超えるお年寄りまでの会員は毎年「クリーン登山会」や「新春登山会」「探鳥会」「樹木学習会」「自然観察会」「おとぎ探険」「つのむれの自然と歴史学習会」などを継続しております。
 また案内板の設置、樹木札のとりつけ、会誌や会報「つのむれ」の発行など、「つのむれ会」は常にふるさとの自然と人間(子ども)をつなぐことを視点に世代を越えた活動と学習をとおして、子どもの健全育成と同時に大人自身もまたふるさと愛を学び合い成長、変革することを願って活動を続けているのでございます。


「童話の家」から「童話学校」

(1)童話祭の原点を求めて「童話の家」開設
 「つのむれ」ファミリー大会が実施される前年、森地区の若者たちは「童話祭を商工会サイドのカーニバル的なものでなく童話の心を軸にしたい。せっかく訪れるお客に童話のひとつも聞けなかったのでは申し訳ない。どんなに小さくても、まずオレ達でやってみよう」と学習に取り組み一つの構想を生み出しました。若者たちは、その構想をもって町役場へ事業費の補助を申し込みましたが、配分後というタイミングもあって600万円の30周年記念事業費のうち、わずか2万円という低額。一方、魚のつかみどりやバーベキュー、子どものカラオケ大会には数10万円の補助がついているのに、若者たちは、童話祭の原点を見失う町当局からはビタ一文ももらうまいと2万円を拒否。自分たちで資金集めと同時に協力者を探し、4つの寺院と1つの茶室を「童話の家」と名づけて終日童話と対面できる場の設定にとりかかったのです。幸い7人の指導者と10のサークルや団体の協力、さらには60人を超える資金援助の支援を受けて、この企画は実施に移されました。
(2)童話寺子屋(童話学校)への発展
 「童話の家」執行の反省会は、その日の夜もたれましたが、もくろみの成功に感動した若者たちは、「童話祭だけの童話の家では、真に求める童話の里づくりも、子ども文化を育てることも難しい。童話の家に結集した地域の人、高校生の善意やエネルギーを広げるために、この童話の家を日常化しよう」と、その日のうちに「童話学校」を発足させました。あれから15年、すでに188回を重ねた童話学校は、商工青年部を中心にわらべサークル協議会の多くの童話の里づくりに関わる人たちの手で引き継がれています。童話学校の会場は、今も童話の家となった寺院を中心に公民館・わらべの館などで毎月定例的に開設されているのです。
 童話学校の会場に寺院を利用するのは、単に足場がよく広さが確保できるからだけではありません。それには、大きな願いと期待を込められているからです。すなわち、豊かな自然に恵まれた玖珠にあっても他の地域と同様、決して心の豊かさは十分ではありません。学校でも・家庭でも、そして地域はもちろん、今最も欠落している心は、他への思いやりと生活の中に宗数的心情の薄いということです。宗数的音痴の世界で育てられることは、人として大切な思いやりとか謙虚さや慈悲の心を養うことができまい。思いやりや慈悲のない社会の文化は、人間の文化とは言えません。
 私たちは、せめてメルヘンの世界に遊び・学び触れ合う場だけでも、寺院やお宮を設定することで、少しでも宗教的雰囲気を体験させてやりたい。仏像と対面し住職や神職の話を聞ける機会をもつことで、私どもの創出できない大事なことを養うことができるであろう、と考えました。
 童話学校は、毎月1回定例日としますが事情によっては2回になることもあります。また、子どもたちは、一方的に見たり、聞いたりするだけでなく、自分たちも人形劇や紙芝居、ペープサート、童話や自分の体験の語り部にもなります。加えて、地域の大人たちと公園の植樹や清掃、山登りなども実施します。これは、童話の世界に感動して、ともに笑い・泣き・手を握り合うと同時に、何かを一緒に創り出したり、汗を流しあったりすることでふるさと愛が伝わり、より美しい子ども文化も育つことを期待しているからでもあります。
 童話学校の内容構築の中心は、児童文化サークル「さわらび」の若者たちですが、毎回「折り紙教室」の母親たちの指導で季節に応じた折り紙指導がなされたり、創作童話集まで発行している「つのむれ文庫」の母親たちの読み聞かせ、ときには老人が子どもの頃の話をしてくれたりします。だごじる童話学校では、母親たちの奉仕で手づくりの「だごじる」がふるまわれ盛況です。また、盆・正月の童話学校は、多くの里帰り親子が参加して、各地の子どもが童話の世界で交流でき、子どもの視点で求めるふるさとへの願いも見えてくるのです。
 学校教育の場では体験できにくい人間形成にとって大切な基礎・基本となる世代を越えての人間交流から身につく「マナーとしてのあいさつ」や「感動的体験」のできる童話学校の意味は大きいと思います。
 幸いなことに、165回記念童話学校には、日本むかし話の常田富士男さんが友情出演してくれるなど県内外の語り部の仲間と協力の輪が広がっております。
(3)ふるさと愛を学ぶ
 童話の里づくり運動は、生涯学習の運動であり「ふるさと愛」を学び、育てる運動でもあるのです。ふるさと愛は、より深く地域を知らなければ力になりません。ふるさとの自然に文化に、そしれ歴史に、今生きている人に学ぶことはとても大切なことです。また、今日強く求められている地域の教育力も、このふるさと愛に支えられてこそ実践の力となるはずです。今、どの地域の公民館でも生涯学習という名の下に、趣味とおけいこごとの学習が盛況です。しかし、これらの学習は生活を彩り、教養を高め、親睦を深める点では成果もあり、意味もありますが、ふるさと愛を生み出し、近隣の人たちや子どもとも一緒に、より豊かな地域を創り出していこう、ふるさとの文化を正しく伝承したり創造していこう、というエネルギーまでは発展しないように思います。なぜなら、この活動はしばしば現実からの逃避行となり、状況を変えていこうという指向が弱いからです。私たちが地域の多くの人々と取り組んでいる童話の里づくり運動は、童話の里「玖珠」の現実を見つめ、そこにある課題に真正面から取り組み、「この町に生まれてきてよかった。この町に生きていてよかった」と思えるほどの地域づくり活動を通して、自分も変わり、人も変え、地域も変えていこうとするものでございます。だから、地域青年団が中心に実施する「童話の里春まつり」や「ほたるの夕」そして「村おこし駅伝大会」、軒先市の「五の市」、「新春子どもまつり」、「巡回わらべ劇場」などの活動がサークル協議会の協力の下に実施されていますが、地域みんなの学びの場・活動の場・交流の場としてひろがりを見せているのです。こうした大人の地域エゴやサークルエゴを乗り越えた支え合いや共同化こそ本当の童話の里づくりを可能にするのではないでしょうか。


巡回わらべ劇場の開設

 童話学校がベースになって「わらべの館」を会場に「新春子どもまつり」・「童話の里春まつり」・「ほたるの夕」など子どもにとって楽しい行事がなされます。しかし、町中心部から離れた辺地の子どもたちは、なかなかこのメルヘンの世界に触れることが難しいのです。そこで、私たちサークル協議会では21団体800人近いサークル員がいますから、出前の「巡回わらべ劇場」を開設することにしました。
 1日の勤務でハラペコのサークル員が次々と会場にやってきます。すると、誰かがおにぎりとお茶を持ってきてくれるのです。田舎の子どもたちの美しい瞳に会いたくて、あの温かい笑顔に会いたくてやってきます。みんな温かい心の結び合いを求めてやってくるのです。こうして、各サークルが力を寄せ合い、学び合い、支え合って昔話や人形劇・影絵・童話劇・ぺープサート・楽しいゲームなどをしてくれます。
 この巡回わらべ劇場も2年目からは、ただ見せるだけでなく、その地域の子どもたちが触れ合え、何らかの形で出演者にもなることが出来るようにしました。さらに、辺地だけでなく、多くの人たちの支えと要望で町の中心部でも開設され好評でありました。サークルの若者たちは、童話の心を弟や妹に伝えることが楽しくて出かけて行きます。そして、子どもと触れ合いながら子どもたちの社会参加の芽を引き出し、育ててくれているのです。


子どもサミットで子ども会活動の充実と小・中学生の連携を

 私たちは、温め続けていた「子どもサミット」を第40回日本童話祭の記念行事として開催しました。
 「求めよう 豊かな心のつながりを! 開こう 子どもの未来を!」をテーマに全国の子ども会活動実践団体に呼び掛けをしたところ、遠くは北海道から沖縄までの子ども会の代表者が5月4・5日の2日間童話の里「くす」に集まって、子どもたち自身の未来を開くために熱心な話し合いがなされました。
 今、自分たちの子ども会がやっている自慢できる活動の出し合いから、これからわがふるさとにどう関わればよいか、何をやらなければならないのか、21世紀への大きく美しい夢が、そしてまた、大人社会に対する厳しい批判も飛び出すなど本当に格調高い論議がなされたのです。そして、2万人を超える童話祭に参加した大観衆の前で、声高らかにサミット宣言を読み上げ、大分県知事に手渡しました。
 サミット宣言「私たちの夢は、私たち1人1人が生まれてきてよかった、といえる21世紀を創り出すことです。そのためにも、私たちは、人と人とが争うことのない平和な世界、そして自然を大事にし、旧い文化を守り、新しい文化や生活を創り出すために、力を合わせ、知恵を寄せ合って子ども文化を築き、社会のために尽くすことを誓い合います」。
 この日本子どもサミットの灯を掲げて、私たちは、第2回・第3回と、すでに5回を重ねる子どもサミットを継続しているところです。費用の関係で規模も内容も縮小されましたが、子どもの未来を地域の大人みんなで育てねばと、多くのふるさとを愛する方々の協力で継続されています。
 大自然の中で小・中学生が一緒になっての集団宿泊を通して、異地域・異年齢の縦集団による感動体験を創り上げるのです。お客さんは1人もいません。サークルのみなさんも子どもたちの活動がうまくいくように美しい汗を一緒に流してくれるのです。その汗がさらに美しい共感を呼ぶのです。サークル員も育成協の役員も、役場の職員もみんな子どもと一緒に楽しい汗を流してくれるのです。
 こうした活動の積み上げが、小・中学生のつながりを深めているのです。小・中学生がうまくいくように子どもたちを揺さぶり、アタックし、「ふるさとを耕し続けている」のがサークル協議会の仲間なのであります。