「ふるさとづくり'95」掲載
<集団の部>ふるさとづくり賞 内閣官房長官賞

子育てにやさしい地域をめざして
岩手県花巻市 花巻おはなしキャラバン
 今、子育てにやさしい環境をと、皆が考えるようになってきましたが、私たちは、昭和51年から8人のボランティアでスタートしました。花巻市に住んでいるお母さんたちが中心になって、子育てに大切なこと、地域でできることは何かと考え、自分たちでできることから活動し始め、18年間子育てにやさしい環境づくりのお手伝いをし続けてきました。
 子どもたちに出会うと「紙芝居のおばさんだ!」「おはなしキャラバンのおかあさんだ!」と声をかけてくれます。社会人になった青年たちも、「何回も人形劇見ましたよ。こどもたちのために続けてくださいね」と懐かしそうに励ましの声をかけてくれるのが嬉しいことです。


おはなしキャラバンをつくったきっかけ

 地元に伝わる昔ばなしも知らないし、テレビばかりで本離れのこどもたちが心豊かに育っていくには、どうしたらよいかと心を痛めていたとき、プロの東京おはなしきゃらばんの公演を見ました。年に1度プロの人形劇を見てこんなに喜ぶのなら、地元のお母さんたちで昔ばなしや、地域に伝わるお話を人形劇にして見せたいと考え、昭和51年の第1回花巻婦人ボランティア講座生が中心になってボランティアグループが誕生したのです。


私たちは夢配達人

 昔ばなし、本の読み聞かせ、紙芝居、人形劇、ぬいぐるみ劇、手あそび、レクリエーション、16ミリ映画など、こどもたちから高齢者まで幅広い皆さんのところに、出前公演をし、交流をしています。
 夢配達の地域は、地元花巻市を中心に活動していましたが、たくさんの要請や要望があり岩手県全地域に、その後東北の各地へ、またフィリピンのこどもたちへとその活動と交流の輪の広がりをみせ、今日にいたっています。
 保育園、幼稚園、小学校を会場として、幼児、小学生と一番多く交流しています。次に多いのが、障害をもっていたり、病弱のこどもと高齢者で、各福祉施設、養護学校、老人ホームにでかけています。あとは、親子、祖父母と孫、地域ぐるみの参加で、公民館、図書館、広揚、公園、文化会館などの施設での公演、交流が主です。


昼と夜の2班で活動

 18年前、8人の仲間でスタート。年々要望が多くなったことと、ボランティアの仲間も増えたことで、活動がしやすいように、お母さん中心の班は「昼の部」。フルタイムで働いている人々は「夜の部」の2班に分けて練習、人形や舞台づくりをし、それぞれで出前公演をするようになりました。
 女性だけの手づくりボランティア劇団に、ボランティアが支えてくれるようになり、今では、9人の男性が参加しています。
 交流範囲が地元を中心にしながら広がり、遠くは、フィリピン大学生との交流がきっかけで、フィリピンに招かれ12日間交流公演し、日本の女性たちのボランティア活動を広く伝えてきました。


こどもたちと共に

 18年間毎年「花巻こどもフェスティバル」に参加協力。ぬいぐるみの動物でこどもたちと遊んだり、昔話、昔の紙芝居を思い起こし水あめを配ったり人形劇公演を続けています。


地域づくりに

(1)花巻地方障害者ふれあい運動会や地元の文化会館の自主事業、地域づくり花と緑の大会、生活展などに参加協力を続けています。
(2)こどもたちから高齢者まで幅広く公演活動を年間40〜60回する他に、小学生の親子、ボランティア団体、保母さんたちに、本の読み聞かせ、昔話の指導と人形づくりから公演の仕方までの実技指導をし、他団体との交流を深めながら、指導者の育成をしています。
(3)郷土に伝わる昔話や、地元の童話作家宮沢賢治の作品を広く紹介するため人形劇の脚本づくりをし、手づくりで人形をつくっています。


花巻を越えて

(1)第13回岩手の県民運動推進大会優良団体として表彰を受けた際、東北の昔話「ホイホイ殿さま」を人形劇で公演しました。
(2)「第4回埼玉県での国民文化祭」「第8回国民文化祭いわて’93」で公演、その他「地域づくりと女性フォーラム」や外国からのお客様との交流と公演活動をしています。
(3)フィリピン大学生と交流して、花巻市で合同公演をしたり、フィリピンに招かれ人形劇公演を12日間しました。


年60回の出前公演

 おはなしキャラバンの仲間は、20代の若者から70代の女性たちで、3世代交流ができるメンバー40人(うち男性9人)です。職業はさまざま、また健康な人だけでなく、ガンを手術した仲間、障害をもっている仲間も一緒です。男性の参加で、大道具、小道具など舞台づくりが楽にできるようになったこと、男性の声でレパートリーか広がったことなど、男性の出番がたくさんあることで男性自身も生き甲斐を持って参加してくれるようになりました。
 年間40〜60回の出前公演、18年間で950回、約8万人のこどもや高齢者と交流してきました。30人位の小さな施設は、平均6人のメンバーで出前活動をしますが、1200人入る大ホールでの公演は、全員集合40人が力を出し合います。
 60代、70代の仲間が活躍していますが、それぞれの地域に住んでいる高齢者の皆さんの昔話の出番も計画し、一緒に参加できる機会をつくっています。
 活動経費は、会費(年3、000円)が主ですが、不足分は、バザーや花巻祭りに夜店をだして産み出したり、寄付金を当てます。


活動の目標と特長

(1)こどもたちに夢と希望を!
 こどもたちに夢と希望を!を合言葉に、心を育て、私たちの郷土を大好きになる運動をしています。
 特長は、こどもと一体となって感動し、おはなしを創りあげる生の対話劇が中心、こどもの参加を工夫しています。
(2)地域づくりは、人づくり
 地域づくりは、人づくりと考え、障害者、高齢者の施設に出かけて交流し学び、これからのこどもたちに役立たせていくよう心がけています。
 花巻おはなしキャラバンは、岩手県で一番早く活動し、各地域のボランティア指導者の育成をしてきました。江刺の人形劇団、釜石、山田、種市と各地にボランティアのグループが育ち活動できるようになりました。
(3)交流から生きがいづくりに
 他団体の交流と実技指導を繰り返し、若年も高齢者も皆、生き甲斐をもって活動に参加しています。


今後ともいきがいある活動を

 ますます高齢社会になっていく中で、80代、90代になっても活動できるグループづくりをめざし、昔話や人形劇で生き甲斐のある活動をし、広く仲間づくりをしていきたいです。
 これから活動していこうというボランティアグループや団体への育成指導にこれからも力をいれていきたいのです。
 「地域づくりは、人づくり」という夢が18年間活動を支えてきました。今後もたくさんの夢の種を、夢配達人として蒔き続け、地域住民一人一人が自分でできるボランティア活動を、ごく当たり前のことのようにできるように応援していきたいです。