「ふるさとづくり'95」掲載
<集団の部>ふるさとづくり振興奨励賞

生きることが楽しい村づくり
長野県小川村 株式会社「小川の庄」
 長野県の西北部に位置する小川村は、山林原野が73%の山村で、かつての人口は半減し高齢化率33%という厳しい過疎に見舞われている。しかし、住民は“おやき”や“そば”など、古くから地域に伝わる食文化や作物とともに高齢者を積極的に活かした村づくりが順調に進展している。その中心が昭和61年5月に発足した村の第3セクター、株式会社「小川の庄」(代表・権田市郎さん、メンバー130人)で、目指すは「生きることが楽しい村」づくりだ。


高齢者の就労の場づくり

 「小川の庄」の基本構想は、村行政に道路整備やおやき工房、漬物工場等の基盤整備に必要な補助を受け、農協には出資と野菜や山菜、小麦粉、そば粉などの生産物の提供を分担してもらい、加工販売面を「小川の庄」が担当するという、第3セクター方式を取り入れた。
 郷土の伝統食品を生かす1集落1品方式の「おやき村」や「農園村」「野沢菜村」「そばの村」「醸造村」「健康村」「渓流村」「山菜キノコ村」を作り、高齢者の就労の場作りと生活技術の還元化を狙いに、おやき村の就労年齢を60歳以上、定年を77歳とした。
 社会事業部の活動では、県内の特別養護老人ホームや精神薄弱者施設などの社会福祉施設を訪問し、おやきづくりの名人たちによる実演訪問を行って大歓迎を受けた。文化部は、小川村の四季を墨絵で描き、12枚1組の絵はがきに作成して大好評。また、季刊の情報紙「やまぶき通信」を発行、全戸に配布している。


ロサンゼルスに進出の「おやき村」

 海外事業部は、平成元年からロサンゼルスで開催されるジャパンエキスポで、毎年実演販売に参加している。60歳を超えたおやき名人やそば打ち名人のおばあちゃんたちが主役である。はじめて海外出張するおばあちゃんたちが、片言の英語でおやきを毎回20000個以上、そばを3000食以上も売り上げるのだ。すでに60人以上も参加し、仕事の喜びと生きがいに胸を膨らませているという。
 今後の課題や展望は、おやき工房の拡張・増設を考えているが、村内だけでは人手の確保が難しく、おやきばあちゃんたちの後継者の養成も必要となっている。周辺地域との連携事業の構想もある。長野市から大町市を結ぶ「野花咲く、ふるさと味街道」もその一つだ。国際交流事業では、エキスポを機会にアメリカにおやき村づくりの計画を進めており、フランスやドイツとも連携を始めつつある。「生きることが楽しい村」づくりを目指して――。