「ふるさとづくり'95」掲載
<集団の部>ふるさとづくり振興奨励賞

個性ある町並みを大切にした住環境の創造
長野県須坂市 信州須坂町並みの会
 黙っていては、須坂の個性を語るものが視界から消え去ってしまう――。江戸時代の館町の遺構や時代を経た公共建築物・歴史的建造物が惜し気もなく消えていくことに危機感をつのらせた人々が「信州須坂町並みの会」(代表・永井善俊さん、メンバー220人)を発足させた。昭和61年11月のことだった。以来、「個性ある町並みを大切にしてより良い住環境をつくり、文化・産業の振興も図ろう」と、今日も努力を続けている。


町並み案内処を開設

 活動は、月例の講演会や研究会を開いたり、先進地の町並み見学会も毎年1度実施してきた。また、古代米の紫米栽培や草木染めつむぎなどの地場産品を開発したり、消え去ろうとしていた明治時代の豪商の館を市都市公社が買い上げ、町並みの会に貸与して平成元年の暮れに「町並みの会事務所兼町並み案内処」が開設された。
 同年5月には、「信州・須坂町並みフェスト’89」を開催。トラストの建造物調査を受けた約40戸の民家に「お庭開放・お座敷拝見」コースを設け、会の普及活動で養成した町並みガイドがさっそく活躍した。2日目は市と共催した「トラスト調査報告会と町並みシンポジウム」が開かれ、県外からも参加した。このようなイベントを実施して分かったことは、市内にトイレや休憩所、ベンチ、食事処などの施設が不足していることであった。


町並み景観賞の創設

 住民に“町並み景観”への認識を深めてもらおうと始めたのが、「町並み景観賞」の創設と「町並み建築相談会」の実施で、建築物は公共施設も対象となり、庭や道路、水路なども対象に含まれている。また、広報活動は、月間の『町並み通信』などで徹底している。
 行政面での成果を挙げると、@観光資源保護財団による町並み調査・ミニ博物館設置事業補助金交付要綱制定(昭和63年)、A伝統保存対策調査による町並み調査の続行(平成元年)、B歴史的地区環境整備街路事業調査(同2年)、C須坂地区歴史的景観保存対策事業補助金要綱制定、都市開発課内に町づくり推進室設置(同5年)、D町づくり推進室を部に昇格、町並みめぐりコースの案内標識設置(同6年)、などだ。
 外部の人が町の旧中心部を歩くことなどかつてなく、落ち込みが言われて久しかった。それが見学者も増え、町のたたずまいの奥深さや空間の贅沢さが次第に理解されるようになって、市民は上を向いて歩くようになった。市民1人1人が参加した町づくりの成果である。