「ふるさとづくり'95」掲載
<集団の部>ふるさとづくり振興奨励賞

春夏秋冬の四季を活かしたむらづくり
佐賀県富士町 羽金山振興会
 ほうれん草、トルコききょうやいちごなど施設野菜の栽培で高収益をあげたり、住民の誰もが農産物を出荷できる「羽金山売店」の建設、旧家や特産品を利用し食事を提供する「囲炉裏茶屋」の開店、四季折々のイベントでは、春「花見の宴」、夏「子どもの自然とのふれあい教室」、秋「ふれあい稲刈り」、冬「七草粥を食する会」の開催などを通じ、地域の活性化を図っているのが昭和63年に発足した羽金山振興会(代表・嘉村好範さん、メンバー50人)である。


むらづくりを推進するに至った背景と成果

 佐賀市まで南へ21キロ富士町上無津呂地区は、総数85戸の84%のほとんどが、兼業農家で最近の農林業の不振と過疎化が進む山間地にあって、また、嘉瀬川ダムの建設により「陸の孤島」となり、ますます過疎化が進み、子どもの夢はなくなり、地区自体の存続さえ困難な状況になるのではとの危機感が若者のなかに起こってきた。
 「このままではいけない、何かをしなければ」若者と三夜待(農業後継者有志の会)有志で会合を繰り返した。そこで、山間地の特色を活かそうと、筑前黒田藩の軍用金10万両が眠るとの言い伝えの羽金山や近くの神水川など豊かな自然を生かして独創的な地域おこしに取り組もうということになった。


ふれあい水田オーナー共同作業など

 羽金山振興会が最初に取り組んだのは「山村ふれあい教室」で、都会っ子たちが、自然の大切さや命の貴さを体験してもらうことを狙いにメンバー宅に、2泊3日ホームステイやキャンプをし、ヤマメ釣り、渓流での水遊び、昆虫採取などで山の子との友情も芽生え、一部では家族同士の交流にまで発展している。
 次に国の重要文化財「吉村家住宅」の建立200年祭と平成桜公園の植樹祭である。羽金山の中腹に桜を咲かせ「花見の宴」に都会の住民を招き、住民との家族的なつきあいを目的に振興会も本格的な活動に入ったのである。また、春秋の「ふれあいたんなか」はメンバーの水田を開放、都会の人に田植えと稲刈りを体験してもらい、山間地での減農薬米を収穫しオーナーに送付する。冬のイベントでは、富士町の特産品「正月の七草」の宣伝普及を目的に、「吉村家」の囲炉裏茶屋での「七草を食する会」は、日本の食生活と伝統行事の良さを見つめ直すなどの活動を、子どもや婦人と一体となって続けている。