「ふるさとづくり'95」掲載
<市町村の部>ふるさとづくり振興奨励賞

伝統を未来へつなぐ、学問のまちづくり
宮城県 岩出山町
 宮城県岩出山町は「伝統を未来へつなぐ、学問のまちづくり」を生涯学習を通し進めている。同町は、伊達政宗公にかかわる有形無形の歴史遺産があり、それがまちづくりに生かされている。学問のまちづくりは、地域教育のあり方を探る「学問サミット」の開催、生涯学習の拠点では、伝統芸能等の活動も活発である。「伊達な郷まちづくり推進機構」が設置されるなど住民自らの取り組みも活発である。


町民に自信と誇りを与えた「学問サミット」

 「学問のまち」の基本理念を町民に理解を深めるために、東北、東京などの大学からゲストを招き、第1回の「学問サミット」を開き、科学技術から人間の尊厳にいたる多様な問題が提言され、「学問のまち」を広く発信する機会となった。
 文化会館と公民館の機能を持ち生涯学習の拠点スコーレハウスには、政宗公の能の関わりを生かし、仮設の能舞台があり、能楽や狂言等講座を開催している。伝統芸能の復活に対する住民の取り組みに弾みがつき、歴史と伝統を未来へと繋ぐかけ橋となっている。
 住民も立ちあがった。町づくりに直接参加して自分たちの地域課題を見つめなおす「伊達な郷まちづくり推進機構」を設置した。これは「推進会議」や「アドバイス会議」、5小学校区単位の「地域づくり懇話会」の3部で構成されている。そこで発見・検討された地域課題は、地域発見活動や地域イベントの開催などの実践活動へつなげられている。


政宗公にあくまでこだわり歴史的景観を保全

 ほかにも住民の活動がある。政宗公が城の防備を兼ねて作った「内川」という農業用水路がある。これが国営かんがい排水事業として全面コンクリートでの改修計画に、住民からまったの声があがり、歴史的な文化遺産として、後世に町の誇りを伝えることを願い「内川を考える会」が生まれた。結果は、自然石を利用した石積み護岸等、歴史性と景観保全に配慮した形での改善整備に成功した。住民と行政が共に力をあわせた結果、やすらぎと潤いを与える川として蘇っている。さらに、町の個性評価、トレンディなまちづくりを相互に学習・研究するグループ、クリエイティブ21の活動も活発だ。シンポジウムの開催や情報発信などを行なっている。
 学問のまちとして数々の試みや施策が、町民に浸透している。「伊達な郷まちづくり推進機構」は各地域毎の『夢プラン』を作成、地域イベントを開催など、住民自らが地域の課題に取り組むという意識も根づいている。