「ふるさとづくり'96」掲載
<集団の部>ふるさとづくり振興奨励賞

うるおいとやすらぎと連帯の“村づくり”
山形県酒田市 てぐらた人和夢実行委員会
 山形県酒田市の東部、中平出地区内の一集落である手蔵田は、戸数77戸、人口375人の県下でもトップクラスの経営規模と収穫量を誇る米作地帯と言われてきた。しかし、社会・経済構造等の変化に伴い兼業化が進み、減反と自由化により生産意欲も沈滞。農業に対する将来展望が描けなくなり、人間的信頼関係や連帯感も薄れつつあった。
 こうした中「嘆き憤っていても何も生まれない。夢を持って何か行動を起こそう」と「手蔵田ホラ吹き大会」を企画、平成3年2月に実施した。70人の参加をえた発起人達は意を強くし、平成3年7月1日「てぐらた人和夢実行委員会」(代表・佐藤良一さん、メンバー16人、顧問3人)の発足にこぎつけたのである。


酒田市アメニティタウン賞を受賞

 活動は多岐にわたる。秋田県東成瀬村手倉とは、歴史文書の交換と友好交流調印を行い末永い友好を約した。「うるおいとやすらぎと連帯の里づくり」として通学路にマリーゴールド等を植え、この道の名称を公募し「なかよしこみち」と名付け、酒出市より第1回アメニティタウン賞を受賞した。家庭に眠っている鯉のぼりの提供を呼びかけ、集まった70尾の鯉を田園広場に泳がせたり、集落内水路に色鯉と金魚を泳がせて、水の大切さを呼びかけた。また、提防の上の桜並木の下でさくらまつりを催した。「地区民親睦交流事業」としては、グランドゴルフやバーベキュー大会、新年会・放談会を開催している。


産地直売方法も研究中

 「生涯学習と生きがいづくり」では講演会や農業研修会を行っている。平成4年1月1日から年3回会報を発刊、親しまれている。歴史的に米作が唯一の産業で栄えてきた地域であるだけに沈滞する現実との落差は大きい。しかし「農業が元気でなければ地域も元気がない」と数人がサクランボの苗木を植えつけ、さらにメロンやネギの栽培にも挑戦し、やっと採算ぺースに乗りそうである。
 そして消費との直結を目指し、安全な作物を姿の見える形で販売する方法を米の産直をはじめ目下研究中である。そして何よりも、兼業から専業に戻った人や専業農業後継者も出てきたのである。後継者達は酪農家と提携して堆肥組合を作り、安全でおいしい有機米作りを目指している。地区に新しい風が吹き始め、人も元気を取り戻した。「中平田楽しい農の会」も結成され活動に広がりを見せ、将来の地域農業のリード役に期待されている。