「ふるさとづくり'96」掲載
<個人の部>ふるさとづくり振興奨励賞

中海水質浄化を基軸にしたまちづくり
鳥取県米子市 向井哲朗
 烏取・島根両県に跨る中海は、日本第5位の風光明媚な天然汽水湖である。昭和40年代から魚貝類や海藻が激減し、50年代には赤潮が多発、湖底にはヘドロが堆積する汚濁の進んだ中海になってしまった。向井さんは、63年に中海の水質汚濁は各家庭からの生活雑排水が原因である、流域住民の水質浄化で中海を救う具体策を提案した「毎日郷土提言賞」に応募、論文が烏取県知事賞に輝いた。それから、手づくり環境新聞「中海」を発行したり、親子環境パトロール隊を編成し指導に当たるなど、地域住民と共に水質浄化の活動を続けている。


廃パンストで中海浄化

 向井さんの町内は、下水道が未整備で1,440戸の台所雑排水は中海にそのまま流入する、この浄化対策に廃パンストの利用マニュアルを手づくりで作成し、町内の婦人会等の講習会で実際に台所排水を使って実験し普及徹底を図ることにした。これは、破れて履けなくなったパンストの両足部分を15〜20センチに輪切り、一方の端を強く縛り、縛った部分を流し台の三角コーナと流し口バスケットに被せることで、調埋屑の流出を防ぐことができ、今では町内90%の家庭で実践している。また、この方法を中海圏に拡大するため流域の自治会、婦人会、学校等で啓発活動も行っている。
 さらに、平成元年11月からは環境新聞「中海」を毎月1,500部発行、町内全戸に配布この6月で93号を数える。記事は中海の水質浄化が中心だが、子どもから年寄りまで参画しており、広く環境問題に住民の関心が高まるような内容にし、町おこしに役立てている。


チビッコ環境パトロール

 「川や中海の水はきれいか」「ごみは捨てていないか」「どんな魚が泳いでいるか」等の点検項目を基に、小学校5・6年生6人で環境パトロールを編成、平成3年7月からチェックを始めた。子どもたちは、「空き缶やタバコの吸い殻のポイ捨てはやめて」等を指摘しており、結果は環境新聞に掲載し町の美化・環境改善活動に寄与している。また、平成5年からは親子環境パトロールがスタート、中海水質調査を行い透明度・ph・比重・溶存酸素濃度の実測、湖上から湖底のヘドロや悪臭の有無を実際に確認する等の活動を通じて、水に親しみながら親子のふれあいを高めている。
 向井さんは、これまで「水環境にやさしい暮らしの工夫」をテーマに、県内外で講習会を開催、台所排水浄化の実験を視覚で訴え、豊かな景視と美しい湖を再び取り戻し、子孫に引き継ごうと努力している。