「ふるさとづくり'97」掲載
<集団の部>ふるさとづくり振興奨励賞

文化鑑賞と感性豊かな人・村づくり
奈良県上北山村 文化鑑賞クラブ「ふれあい企画」
 大自然の豊かな山村で、音楽をはじめ、落語、木・漆工芸等の豊かな文化にふれるとともに、村民、村外の人たちとの交流を図ろうと、ふれあいコンサート、てるてるぼうず児童画コンクール、ふれあい寄席等を企画してきた。活動資金は、村内の建設業者をはじめとした会員24人によって集められ、これらの企画を実現してきている。寄席などを通じてこれまで行き来のない高齢者の交流が深まるなど、ふれあいの機会が広がってきている。


村民の文化レベルの向上をめざして

 奈良県吉野郡上北山村は、雨で有名な大台ヶ原のふもとにある人口1,000人足らずの山間僻地である。村人が文化鑑賞に出かける機会もないため、「文化活動」を通じて村内外の人々との出会い、ふれあいを大切にをモットーとして交流し、村民の資質・文化レベルの向上と村の活性化を目指して、平成5年、文化鑑賞クラブ「ふれあい企画」(代表・奥村志づさん、メンバー12人)が誕生した。最初の活動は、奈良デザイン協会のメンバーと、日本最多雨地帯である特性を生かして、「てるてるぼうず談義」と題しての交流、そしてその夜には、木の匂いが薫るログハウスを会場に、ふれあいコンサートを開き、アメリカのフルート奏者、奈良市内のギター奏者による演奏を50数人の村内外の人たちと楽しんだ。


多彩な文化活動も事業者、個人の協力で

 ここの年間活動は、村出身の落語家やその仲間による「ふれあい寄席」であるが、平成6年には梅雨どきを選んで「てるてるぼうず児童画コンクール」を実施、7年には地元出身の木・漆工芸家による「木・漆工展」を開催している。また、村には書店がないことからプラスチックの書籍ケースに話題の本を入れ、人から人へ回覧する「回覧文庫」も実施している。
 この会の活動資金は、建設業者、商店主を中心とした賛助会員と個人会員の会費、他に、「てるてるぼうず児童画コンクール」で最優秀賞に輝いた作品を使ったハンドタオルを作って販売したり、祭りに模擬店を出店して得た収益金などをあてている。
 はじめての「てるてるぼうず談義」は、住民に好評だったことから、その後は、会場を広い場所に変え実施しているが、高齢者の集まる場ができたり、住民の文化的な仕事に対する関心が高まっている。メンバーの将来に対する抱負は大きく、自然の中でこそ味わえる「小さな谷間のコンサート場」の計画や「ふるさとわが村写真コンテスト」の実施で、文化を鑑賞することから、村民が自ら創り出すことをねらっている。こうした過程を通じ人々が交流し、良質な感動を共感できる仲間づくり、ふるさとづくりへ発展させようと活動している。