「ふるさとづくり'97」掲載
<個人の部>ふるさとづくり振興奨励賞

花を生かし心安らぐ癒しの町づくり
千葉県和田町 辻 貞夫
 花の生産で全国的にも有名な南房総和田町で、辻貞夫さんは、平成3年にPTA連絡協議会長を務め、当時保護者のコーラスを始めたり、小・中学生から募集したアイデア「すばらしい和田町づくり」作品から、花の町づくりや伝承劇「くろしおの花」上演を実現させた。また、自営業を営むかたわら5年前から「文化サークル和田」や「和田ふるさと塾」を主宰するなど、さらに、子どもたちの夢が実現できるふるさとづくり活動に励んでいる。


花を売る町から花いっぱいの町へ

 子どもたちに、ふるさと意識や未来に夢が抱けるようにと、4年2月、町商工会等主催の「町づくりは人づくり」講演会に、50人の生徒が自由に参加した。「日本ふるさと塾」の萩原講師は、「和田町は花の町ではなく、花を売る町ではないか」と指摘した。これに生徒会は奮起し、花いっぱい運動を展開し、現在小中高校へと輪が広がっている。和田中学校は、6年12月、第31回全国花いっぱいコンクールで優秀賞を受賞している。
 そして、花の町イメージアップに、房州花発祥の地、花の恩人・間宮七郎平生誕百年祭と伝承劇「くろしおの花」…間宮七郎平伝…の作成と上演に1年5か月の準備期間をかけ、5年10月に実現した。実行委員の辻さんは、この伝承劇が、和田中の生徒が3年に1度公の場で公開、偉業を伝えることになると喜んでいる。また、6年2月、NHKひるどき日本列島の房総花便りでも放映され「文化サークル和田」のメンバーが出演し好評を博した。


花は心の食べ物

 平成7年には、21世紀に向けて町づくりの拠点に「和田ふるさと塾」を設立した。これまで多彩な事業や活動を通じ培った、仲間たちのさらなるロマンを実現するためである。同塾が初めて開催した講演会で、日本医科大学高柳助教授は「癒しの環境」をテーマに公演、1月17日の阪神大震災に触れ、「被災者がこれから必要な心の癒しを、和田町から神戸に送れないだろうか」と提案された。
 辻さんは、早速カーネーションや菜の花など生花90キロを持って被災地を訪れ「心の傷をいやして」と花束を手渡した。現地ではみんな心から喜んでくれたことから、その後も花農家の協力を得て5回に渡って贈り続けた。「花は心の食べ物だ」という言葉を実感した辻さんは、現在、「被災地の悲しみの時だけではなく、嬉しい時にも花を届け励ます」というボランティア組織「フラワー応援団」構想を提案し、心安らぐ癒しの和田町実現を目指している。