「ふるさとづくり'98」掲載
<集団の部>ふるさとづくり振興奨励賞

地域から小さな国づくり
山梨県韮崎市 平成かかしカーニバル実行委員会
 地域づくり活動が皆無であった小さいな集落で、1つのアイディアから生まれたイベントの「平成かかしカーニバル」実行委員会(代表・細田勝茂さんメンバー90人)は、多くのマスコミに注目を浴びるととともに、全町規模のまつりにひろがった。


どんな地域にも誇れる資源がある

 韮崎市宇波円井地区は世帯数50。地域づくり活動については、「こんな小さな集落では、何も出来ようがない」というあきらめの声が聞かれていた。この地区の公民館分館には、役員のなり手もなく、従来徴収していた会費の徴収もままならなず、活動も皆無といってよかった。こんな時役員に任命された2人が地域づくりの仕掛け人になろうと思い、各種組織の代表で構成される運営委員会を発足させ、規約を整備し、会費徴収を再開し、健康教室や文化祭の開催などを提案し、実行に移していった。さらに「どんな地域にも誇れる資源がある」との考えのもと生み出されたのが「かかし」カーニバルである。かつての米どころには、黄金色の稲穂のなかに立ち並ぶかかしがつきものだった。このかかしを背景に人びとが集い、語りあっていた。それをいまに呼び戻そう。「平成かかしカーニバル」の開催である。
 平成5年、実行委員会が組織され作品の募集を始めた。サッカーのラモス選手、セーラームーンなど世相を反映した31体のかかしが寄せられた。これらのかかしが堰沿いの道路に3週間にわたって立ち並んだ。この奇抜なアイデアは、全国のマスコミから注目を集め、多くの見学者がこの地を訪れた。


全町規模のカーニバルへ、そして夢は広がる

 訪れる人の多さと報道に動かされた町から、町全体の行事にしたいとの申し入れがあり、実行委員会も集落単位から、町全体の実行委員会へと衣更えした。そして協力者も増えていった。財政面でも商工会、町内企業などから合わせて130万円の寄付が寄せられ、県からの補助も受けた。
 こうして、第2回には151体、第3回には150体のかかしが寄せられた。そして住民の手作りの果物、ワイン、そして新名物の「かかし汁」の露店が建ち並んだ。観光バスが立ち寄り、写真コンテストも開かれた。ここを訪れた静岡大仁町長は「住民の情熱に感動した。次回には、大仁町からも出展する」と約束した。
 実行委員会では、かかしの出展数をもっと増やそう、かかしの里のシンボルを作ろう、伝統あるふるさと祭りをカーニバルに合流させてはどうか、などと夢をふくらませている。