「ふるさとづくり'98」掲載
<市町村の部>ふるさとづくり振興奨励賞

花のユートピアを目指して
鹿児島県 山川町
 鹿児島県山川町(町長・中村冶男さん)では、温暖な気候と美しい景観を利用して花のまちづくりに取り組んでいる。子ども会や老人クラブ、自治公民館と連携し、住民全体で取り組んでいるこの運動は今年で10年目を迎えるが、役場や派出所、銀行といった公共施設から、各集落にも花壇が設けられ、組織の活性化と地域おこしに一役買っている。


花を通じた町のPR

 薩摩半島の最南端に位置する山川町は、平均気温18度。この温暖な気候を利用して、昔から切り花や観葉植物などの栽培が盛んに行われている。同町では、この花づくりに住民全体で取り組んで、「花のまちづくり」を推進している。
 豊富な湯量の温泉、開聞岳を一望できる海岸は霧島屋久国立公園に位置するなど、観光資源に恵まれた同町。それだけにとどまらず、もっと町の魅力をアピールしようと、10年ほど前から農家とタイアップして「花誘便」「花狩り」を実施している。「花誘便」は、一足早い山川の春を町花のキンギョソウに託して全国に郵便で届けようというもので、毎年13000人を超す入場者を集める「花狩り」とともに、好評を博している。
 また、町が推進する「花の町づくり」を住民にも広く知ってもらい、参加してもらおうと、広報紙を使ってPRを続け、花づくりに励む人たちに情報交換の場を提供している。その成果として、幼稚園や学校、老人クラブや町内会などで花壇造りに取り組む人たちや、自分の家で見事な花壇を造って、地域の美化に貢献する人たちが増えた。また、町主催の「花と緑のコンクール」には毎年たくさんの応募者が、趣向を凝らした花壇や庭の美しさを競っている。


新しい文化の創造へ

 地域の気候や景観の美しさを引き出すための工夫もなされている。「薩摩富士」と称される開聞岳を一望できる海沿いは、カラフルな花を集中的に植栽しているため、観光客の写真スポットになっている。また、ツマベニ蝶の自生北限であることから、蜜源となるハイビスカスやランタナなども植えられて、「南国」の雰囲気づくりに一役買っている。
 こうした町と住民が一体となった花の町づくりは、さまざまな方向に発展を見せている。住民は厄入りや成人式、還暦といった人生の節目に桜を植栽し、「鷲尾岳を桜の名所にしよう」という町の計画に協力している。また、町のあちこちにフラワーアレンジメント教室ができ、新しい生活文化が芽生えつつある。
 町では花づくりを通じて生まれた住民の連帯感を大切にし、さらに魅力ある地域づくりを目指している。