「ふるさとづくり'99」掲載
<集団の部>ふるさとづくり振興奨励賞

福祉問題を分かりやすい演劇にして好評
宮城県柴田町 福祉劇団・鶴亀
 福祉問題を難しく考える講演などよりも、分かり易い演劇で表現してみてはどうか、と考えたのが、演劇に興味を持つ地域の”芸達者たち”だった。早速、福祉問題を明るく、まじめに演じるのを目的に、柴田町の福祉大会をきっかけに平成3年、「福祉劇団・鶴亀」(代表・菊地真一さん、メンバー28人)を結成。町の福祉大会でデビューした。結果は大好評で、団員たちも意を強め、住民劇から本格的な『劇団』に成長した。


身近な福祉問題を明るくパロディー風に

 劇団の出し物は、主に「寝たきりになったお殿様」「おまかせ福ちゃん」の2本立てだ。脚本・演出は福祉問題に詳しい女性の町議会議員が担当。団員は40歳代から86歳までの28人。「……お殿様」のストーリーは、病などから床につくようになった殿様が、身の回りのことは一人でやろうと意地を張るが、一人ではできない。周囲の介護が必要になる。家来たちに支えられて元気になった殿様が「みんなの助けがあったからこそ元気になれた」と自覚する。つまり、殿様を助けた家来たちは、家族や地域社会で取り組む福祉ケアを言い表している。
 身近な福祉の問題を明るく、しかも本質を外さないように演じるのである。また、大上段から振りかぶるのではなく、放言丸出しの庶民的なパロディー風の芸風が持ち味となっている。
 9年には、これまでの活動が評価されて、「第8回宮城地域づくり大賞」(スピリット部門)を受賞し、テレビやラジオで紹介された。しかし、団員たちは、一緒に受賞した他団体の活動に比べれば、社会的貢献度はまだまだと、団員皆が芸に磨きをかけ、一層の精進を期している。


1人も数100人も区別しない出前公演

 10年11月、地元の仙南芸術文化センターで開く公演には、「福祉先進県づくり」を目指す浅野宮城県知事に、出演を依頼しており、”名役者”にふんする浅野知事の出演を、団員たちは今から皆で楽しみにしていて、練習にもおのずから気合いが入っている。
 劇団の活動が知られるようになって、県内外からの公演依頼も増え、嬉しい悲鳴を上げながらも、団員たちの仕事の調整などをしながらそれに応えてきた。こうしてこれまでの公演回数は52回を数える。また、最近になって、町内の一般家庭への「出前公演」も始めた。相手が1人でも、数100人の観客でも同様に応えていくのだという。これも、プロの劇団ではなく、ボランティア劇団としての使命、と自覚しているからだ。
 活動上の悩みは、やっぱり資金面だ。公演料はなく、交通費程度の謝礼を貰うだけだが、公演にはレンタカーを調達し、衣装代や化粧代もかさむ。団員たちは近くにオープンしたショッピングセンターなどでアルバイトをして報酬の一部を劇団の活動費に回すなどしてやりくりしているが、こうした資金難と団員の高齢化の克服が今後の劇団の課題となっている。