「ふるさとづくり'99」掲載
<集団の部>ふるさとづくり振興奨励賞

地域の活性化は地域文化の復興から
岡山県上斎原村 制作者集団猪八戒
 中国産地の奥深く、人口980人の上齋原村は典型的な過疎化の中で、村に伝わる夏祭りや健康・豊作祈願など数々の民族芸能も断絶寸前の状態にあった。伝統行事を復活させて村に活力を取り戻そうと、有志の間で話し合って結成したのが、製作者集団「猪八戒」(代表・小椋潤二さん、メンバー12人)。平成8年のことで、以来、夏祭りや奉納子ども相撲を復活させ、雪祭り大雪像づくりなどで、村に賑いと連帯が戻ってきた。


夏の夜を彩るネブタィを発案し

 夏の無病息災と秋の豊作を願って、毎年8月に行われる上齋原神社の夏祭りはどこにでもある祭りだったが、かつての行事は影をひそめ、断絶寸前の状態にあった。そして、近年は、子ども向け映画が細々と開かれたり、盆踊りがあっても踊りの輪に加わるでもなく、ただ夜店を取り巻くだけという沈滞した村のムードを何とか変えようと思い立ったのが猪八戒だった。
 猪八戒は、むかし村の街道沿いにあったという、子どもの絵を描いた額灯籠と津軽のネブタを重ね合わせて、村の伝説の絵柄を描いた「ネブタィ」(美作地方の方言で「眠い」)を発案。7〜8月にかけて、夏の夜を2週間、「ネブタィ」が電灯に照らし出されて浮かび上がった。津軽のネブタほどパッとしないから眠くなるかも、と謙遜したのが命名の理由だ。遊び感覚が生きている。このネブタを寝豚にかけて、中国の西遊記で活躍する猪八戒を連想したのが、集団名の由来という。
 大灯蘢ネブタィは、国道脇で2週間にわたって毎夜点灯し、夏祭りや盆踊りの景気付けになっていたが、2年目からは子どもが10人ほど乗って引き回せる山車型に改造、村内を賑やかに巡行して、夏の夜をより活気あるものに変えている。


子ども奉納相撲の復活や雪祭りで雪像建設

 地下(ジゲ)相撲と呼ばれる草相撲が、この地方では古くから盛んだった。活躍した力士や力持ちの話が伝えられており、力比べをした力石も残っている。そうした伝説的に伝承されていたいくつかが調査で明らかになり、40年も前に途絶えていた由緒ある上齋原神社の子ども奉納相撲を復活させることになった。
 上齋原神社の境内に土俵を復活し、小学生を対象に低学年、中学年、高学年に別けてトーナメント方式で戦うことにした。男女混合だったが、低学年の部では力持ちの少女が見事優勝を飾り、高学年でははじめは躊躇していた女子も、気合いが入ってくるとなりふりかまわず取っ組み合いの熱戦を展開した。
 雪の多い上齋原村の恩原高原スキー場では、平成4年から氷紋まつりという雪祭りを行って、彫刻家たちが童話をテーマに氷像をつくっていたが、それにも猪八戒が支援に乗り出し、国道沿いに5メートルを越える大雪像を建設、8年からは毎年雪うさぎや雪姫、ドラえもんなどの雪像が人気を呼んでいる。
 10年1月からは、月1回、地域情報を満載した広報紙を発行して、周辺とのネットワーク形成と情報発信に努めている。