「ふるさとづくり'99」掲載
<集団の部>ふるさとづくり振興奨励賞

都市の河川で親水筏レースを展開
長崎県長崎市 浦上いかだ下り大会実行委員会
 長崎市内を流れる浦上川は、県内で最も汚染が進み、悪臭漂う川となっていた。この川を、昔の浦上川のように、潤いのある水辺を取り戻し、市民の憩いの場にしたいという願いから、市内の青年団体のOBが中心になって、昭和63年に「浦上川いかだ下り大会実行委員会」(代表・黒岩秀文さん、メンバー約20人)を結成。筏下りという遊びを通して、川を市民の身近なものにしていく中から、河川の浄化を進めている。


汚染された川を遊び場にする「逆転」の発想

 昭和63年、第1回大会時には、過去、浦上川で筏下りなどをした例はなく、そのために事前に実行委員たちがボートに乗ったり、筏を制作して実際に浦上川を下るなどして実現可能かどうかを検討した。結果は、浦上川の上流から下流にかけて筏で下ることが可能であると判明。しかし、一層の安全確保のために救出船を出して、川への転落時に備える配慮をするなど、万全の備えをした上で筏下り大会が始まった。
 清流で催される筏下りは全国各地で見られるが、大変汚染の進んだ都市の河川を舞台にした筏下り大会は全国的にみても例がなく、それだけに「逆転の発想」から生まれたイベントとして、当時、マスコミなどから大変注目を集め、PR効果を大いに高めることができた。
 年中行事となった浦上川筏下り大会は、回を重ねるごとに市民の間から「最近、浦上川が大分きれいになった」という声が聞けるようになった。確かに以前のような悪臭もなくなり、白鷺などの水鳥も戻ってきていた。しかし、水質的にはまだ県内の河川の中では汚染されている方だった。
 実行委員会では、さらに川への関心と浄化を一層訴えていくために、周辺の企業を回って200社を超える企業から協賛金を集め、一般市民からも支援や応援を取りつけていった。


夏の風物詩として定着した筏川下り大会

 浦上川筏下り大会はこうして年々盛んになり、長崎市民が参加して楽しむ夏の風物詩として定着している。筏の川下りに参加するのは、子供会やファミリー、企業などから例年約30チーム、約300人にも上る。筏は、必ず手作りで参加することが条件。競技はユニークレース部とタイムレース部の2つに分かれていて、実行委員会ではデザインに工夫を凝らしたり浦上川の浄化アピールに重点を置くユニークレースに力を入れている。また、タイムレースも、チーム全員が楽しく一体となって筏をこぐことに重きを置くレース展開に努めてきた。
 筏の川下り大会は、実行委員会のあまり金をかけず、参加者自身のユニークな手作り筏を評価するという方針が、多くの市民の共感を呼んでいる。平成9年からは、実行委員会でゴムボートを購入し、子ども中心のゴムボートレースも加わった。
 臭いものにフタをするのでなく、より身近なものにしていくことが環境浄化につながることを、この活動が教えている。