「ふるさとづくり'99」掲載
<集団の部>ふるさとづくり振興奨励賞

山村留学里親制度で地域の活性化果たす
鹿児島県霧島町 永水小学校山村留学里親制度実施委員会
 霧島町の南部、大部分が山林・田畑の永水地区は、活気のない過疎化の進む山村となっていた。しかし、それを逆手にとって、豊かな自然や地域の伝承文化、農村に住む人びとの人情などを資源に、山村留学里親制度の導入を思い立った。平成3年、「永水小学校山村留学里親制度実施委員会」(代表・小濱公志さん、メンバー99人)を組織。留学生を受け入れることで子どもたちの健全な成長・発達と地域の活性化に寄与してきた。


動き出した1年間の山村留学里親制度

 多発する青少年の問題行動にいかに対処していくかは、今日の社会の重要な課題の1つだ。そして、それは学校や家庭、地域を上げて取り組む課題であると同時に、豊かな自然体験を通して、豊かな感性や豊かな心を子どもたちの中に育んでいくことも欠かせない。山村留学は、そうした今日の教育課題を満たすとともに、学校や地域の活性化を狙いに始められた。
 委員会は早速、1年間の留学生受け入れの募集を開始。4年度は留学生5人を受け入れ、永水小は複式学級を解消した。以後、5年度13人、6年度11人、7年度8人、8年度11人、9年度9人、10年度8人を受け入れ、延べ65人に達している。
 学校と地域の連携による自然体験では、いちご狩り(4月)茶摘み(5月)田植え(6月)栗拾い(9月)稲刈りやいも掘り、鯉の放流大会(10月)永水オリエンテーリング大会(2月)と、楽しい行事を通年に渡って実施している。
 委員会では、6年度から短期山村留学事業も始めた。夏休み中に4泊5日の日程で、子どもたちをホームスティで一家に1人を預かり、農業体験や自然体験、竹細工作り、筏や魚釣りなどの川遊びを楽しむ。毎年20人ほど受け入れ、350人近い応募者のうちから、これまでに100人近く受け入れてきた。また、12月の第3日曜日には、毎年グルメ歩こう会を開く。地区の歴史や自然を訪ねて、特産のだんごやたまご、手打ちそばなどを食べてもらう。毎年300人からの参加者で賑う。


留学生・地区児童・地域で得たものは多く

 成果として、永水小では、児童の増加や、留学生の積極的な姿勢やユニークな発想が、地区の児童を刺激して活気をもたらしたり、多様な考え方を生み、固定化された人間関係から、新しい人間関係を再構築している。また、留学生は、豊かな自然の中で伸び伸びと暮らし、心身ともにたくましくなり、自立心・独立心が強まり、親や家族を思いやる心が高まった。
 里親家庭では、自然のよさを再認識し、親子で生活体験活動を重視するようになり、わが子のよさや家庭教育を見直すよい機会になった。地域社会も、地域のよさを再発見し、山村留学里親制度の情報を、基地としての自信を持って発信にするとともに、青年や壮年、高齢者間の連携を強めることができた。
 山村留学里親制度は、子どもたちの健全な成長・発達に大きな意義を持つと共に、村起こしにも大きく寄与している。