「ふるさとづくり'99」掲載
<市町村の部>ふるさとづくり振興奨励賞

北斎をテーマに町民参加のまちづくり
長野県 小布施町
 日本が世界に誇る浮世絵師・葛飾北斎が生涯を閉じて、150年目の記念すべき1998年、命日翌日の4月19日から22日の4日間、人口1万2000の小布施町で日本で初の「国際北斎会議」が開かれた。15万人の人出で賑った期間中、北斎の代表作、冨嶽三十六景『凱風快晴』のごとく空は晴れ渡り、有意義だった国際会議の開催に加えて、今後の地域文化の振興や国際交流、住民・行政一体のまちづくりにも大きな刺激をもたらした。


第3回国際北斎会議in小布施を開く

 「北斎の肉筆画」(90年)、「北斎とその時代」(94年)のテーマで過去2回、イタリアのベニス大学国際北斎研究センター主催で開かれてきたのに続いて、「小布施に継がれる北斎と江戸文化」をテーマに「第3回国際北斎会議in小布施」が小布施町勤労青少年ホーム北斎ホールで開かれ、世界17か国から北斎研究者や浮世絵研究者ら300人が参加した。
 国際会議では、アメリカのドナルド・キーン、コロンビア大学名誉教授の「文学に反映された江戸時代の日本人の生活」と題した基調講演を皮切りに、内外の研究者18人の論文発表と討議が行われた。
期間中、国際会議参加者と住民との交流を深めるオープニングパーティやエクスカーション等を実施。北斎フェスティバルの「長屋祭り小布施」では、江戸長屋街の賑いを小布施に再現したり、「長屋ゾーン」では東京・墨田区からきた江戸職人による浮世絵摺りなどの伝統工芸品の制作実演販売、「舞台ゾーン」の伝統芸能の披露、「出店・祭りゾーン」の地場生産の農産物や北斎焼き、七宝焼きなどの手作り工芸品の販売、大道芸……、夜の「ナイトフェスティバル」は、神楽や神輿、和太鼓演奏、花火大会等々と、終日多彩なイベントが催された。
 北斎館や高井鴻山記念館、おぶせミュージアムで合同開催した「北斎展」など、町内17に及ぶ美術館等では、国際会議を記念して「美術館記念特別展」を開き、北斎の足跡を追体験する「北斎の足跡を辿る旅」や「北斎映画祭」、著名人による「トークショウ北斎を語る」等々も合わせて実施された。


北斎ゆかりのまちから世界へ

 国際北斎会議や数多く行われた関連事業の成功は、手探りの中での準備や運営だったが、実行委員会やボランティア、それに町民一人ひとりが小布施の文化に誇りを持ち、自ら考え、参加し、行動してきた賜物だった。それだけに町では、これを契機に、真の国際化時代に対応した人づくりや地域づくり、新たな地域文化の創造などに一層努力していくことにしている。
没後150年を経て、なお国際的評価が高まる浮世絵師・葛飾北斎。その北斎が最晩年の一時期を過ごし、幾多の傑作を遺した町小布施。”我が町”に残されたその足跡は今なお息づき、住民たちが守り受け継いでいる。そして、それはこの地でさらに未来へと育まれ続けていくであろう。