「まち むら」137号掲載
ル ポ

必要とする誰かのために自分たちのできることを
愛媛県西予市 多田エコグループたんぽぽ生活学校
愛媛県新居浜市 グループさつき生活学校
 「食品ロス削減」「フードドライブ」「子ども食堂」など年々、食への取り組みが全国各地で行われるようになってきた。身近な暮らしや地域の問題に取り組んでいる生活学校では、平成26年度から食品ロス削減全国運動を行っている。今年度は、食品ロス見直しデー、フードドライブ、食品ロス削減の親子クッキングを重点において活動している。今回は、愛媛県内の二つの生活学校の取り組みを紹介しよう。

初めてのフードドライブで見えてきたこと

 田園風景が広がる山間の町、愛媛県西予市宇和町。多田エコグループたんぽぽ生活学校は「宇和町多田地区の豊かな自然を守ろう」という思いで平成9年に活動を始め、現在、30名前後の女性メンバーが月2回集まって活動を続けている。主な活動は、生ゴミをリサイクルして有機肥料にするためのボカシ(発酵資材)作り。ゴミ焼却場に出す生ゴミを減らし、排出されるダイオキシンの量を減らしたいという思いで約20年間、活動を続けている。その他、地元の小学生たちと一緒に地区を流れる河川の水質や水生生物を調査し、川を汚さないこと、生き物を大切にする心を伝えている。
 多田エコグループたんぽぽ生活学校が食品ロス削減に取り組み始めたのは、生活学校の食品ロス削減全国運動がきっかけだった。昨年度から継続している毎月1日の食品ロス見直しデーには、冷蔵庫の中をチェックし、食品ロスになったものの重さを量り、「削減家計簿」に記録している。昨年度は取り組みの形として「〜食べもの食べきりレシピ集〜 いただきます」を作成した。そこには地方ならではの感覚、畑で野菜がたくさん収穫できた時のための野菜レシピがズラリ。もったいないという気持ちから生まれた知恵や常備菜レシピが掲載されている。
 そして今年度、新たにフードドライブヘの取り組みを始めた。フードドライブは、家庭に余っている食品を待ち寄り、地域の福祉団体や施設などに寄付する活動。食品ロス見直しデーに、捨ててしまう食品があることに気付いたこともきっかけとなった。
 第1回のフードドライブは、2016年9月〜10月にかけて実施した。生活学校の会員と市内の環境グループに、説明をしながらお願いのチラシを配布した。「食品を余らさないから」という声もあり、出足が悪く、当初は不安に思っていたが、最終的には乾物、麺類、調味料、お菓子など120個もの食品が集まった。代表の菊地由嘉さんは「短期間で行ったこと。回収日を決めて依頼先に車で集荷にまわったこと。お礼も含めて伝達をしっかりと行ったことが結果につながったと思う。今後も続けていきたい」と話している。
 しかし、菊地さんには収集と並行してもうひとつクリアしなければならないことがあった。それは集めた食品の受け入れ先を見つけること。児童養護施設などの大きな施設は、栄養士さんが献立を決めているため受け入れられないとのこと。また市役所では、個人情報の観点から困っている家庭を教えることはできないという返答でしばらくの間、途方に暮れていたという。食品ロスとして余っているものを、どのようにしたら必要としている人に受け入れてもらえるのだろうか。思いをめぐらせているうちに、知らない大きな施設ではなく、知っている小さな施設の存在に気が付いた。ダメ元で市内の個人経営のグループホームと就労支援施設に話をしたところ、喜んで受け入れてもらえることとなった。そして、もうひとつは、同じ県内の生活学校として以前からつながりがあり、子ども食堂に取り組んでいる新居浜市の「グループさつき生活学校」。結果的に三つの団体に受け入れてもらえることとなった。

経験を生かしてできることを

 グループさつき生活学校代表の原綾子さんは、何十年も前から食品公害勉強会のグループを立ち上げるなど食に関する活動を行ってきた。また、グループさつき生活学校の前身、グループひまわり生活学校時代には、新居浜市でマイバッグ運動を展開し、市内の大手スーパー全店舗でレジ袋の無料配布を中止する活動を成功に導いている。
 グループさつき生活学校として活動を始めたのは平成15年5月からで、現在メンバーは13名ほど。以前、「まちむら」の記事でフードバンクのことを知り、勉強を続けるうちに子ども食堂に行き着いた。本来の目的、子どもの貧困対策として昨年8月から月1回のペースで食事提供を行っているが、子ども食堂というネーミングに抵抗があり、「withチルドレン料理教室」として活動している。ばあばと一緒に、ごはんやおやつを作ろうという名目で、一緒に調理を行っている。昔ながらの料理、もったいないから皮は薄くむくなど食品ロスについて教えたり、食品添加物やゴミの話も交えながら行っている。子どもたちや保護者にも好評で「美味しかった」「また来るね」という感想をいただいているそうだ。11月の料理教室では、多田エコグループたんぽぽ生活学校からフードドライブで届いた乾物などの食品を使用。山口県の生活会議「住みたくなるふるさとづくり実行委員会」からは玄米、白米などが届けられた。予算が少なく、材料を節約するなど当初は心配なことも多かったが、少しずつ輪が広がってきていることを原さんはうれしく感じているという。
 しかし、人集めにはまだ課題も残っている。20名募集のところ、多い時でも子ども10名、保護者3名の参加。チラシも配布したが、行政や学校には制限も多く、今は口コミによる参加が頼りだ。「今でもこのような手法でいいのかという疑問は持っている。ただ、自分たちの本当の役割は、役に立つこと。今まで勉強してきたことを生かしてやっていけたら」と原さんは話している。11月からは地元の愛媛県立新居浜南高等学校の生徒がボランティアとして参加してくれるようになった。また、今後、近隣グループと協力していくことも計画中だ。できるだけ多くの人たちとよい関係を築きながら、力と心を合わせて助け合っていくこと、それが継続への近道になるのかもしれない。