「まち むら」141号掲載 |
ル ポ |
安心して3世代が暮らせ笑顔あふれる塩見 |
宮崎県日向市 塩見まちづくり協議会 |
塩見地区は、日向市の中心部から西に2キロメートル進んだ所にある農村地域で、六つの自治会で構成し、人口3500人、1200世帯が暮らしている。当地区は、ユーモラスな「ひょっとこ踊り」の発祥の地として有名である。 塩見地区ではもともと、男性が厄入りを迎える39歳の時に厄年会を結成し、以後、厄が晴れる41歳までの3年間に、大厄・中厄・晴厄が一体となって地域の祭りや行事の一部を支え継承してきた。 しかし、近年は少子高齢化と若者の減少が進み、地域行事の衰退や農業後継者不足など、様々な問題を抱えていた。 そこで、平成22年9月に、当時の塩見厄年会・厄年OB会の40代を中心とするメンバーが立ち上がり、「塩見まちづくり協議会」を結成し、塩見地区を元気にしようと活動を展開している。 ブルーベリー葉の栽培 当協議会では、遊休農地の解消と自主財源確保のため、平成24年からブルーベリー葉の栽培を行っている。 このブルーベリー葉は、「くにさと35号」という品種で、宮崎大学が中心となって宮崎県内の各地に栽培面積を拡大しているもので、抗酸化作用や血圧抑制に効果があると言われており、お茶やサプリメントに加工し販売されている。 平成24年に、宮崎大学から日向市へ実証ほ場の打診があった際、当協議会では、すぐに土地を確保し、その年の11月に、塩見地区内の20アールの畑(遊休地)に約7000本のブルーベリーの苗の植付けを行った。 植付け後は、同大学や市担当課のご指導により、年々収量が伸び、平成28年度には4.3トンの収量と、約100万円の収入となったところである。 また、塩見独自のブランドとして、ブルーベリー葉と、日向市特産の柑橘類「へべす」の果皮を天日干ししたものと合わせた「ブルーベリー葉&へべす」のブレンド茶も道の駅やインターネットで販売中である。 表1ブルーベリー葉の収穫量の推移
放課後子ども教室が盛ん 当協議会では、青少年の健全育成と“地域の子どもは地域で育てる”という観点から、平成23年から市の委託を受けて、日向市立塩見小学校の児童を対象とした、『しおみっ子放課後子ども教室』を運営している。 子ども教室では、教育活動推進員や教育活動サポーター12人が、日替わりで担当し、年間を通じた農作業体験や、陶芸、お菓子作り、太鼓の練習などの活動を行っている。 特に、農作業体験では、校舎横に子ども教室用の畑を設置して、四季折々の野菜を栽培している。 また、クリスマスリース作りや凧作りなど、季節に応じたイベントの企画運営と体験学習を行っており、さらに、毎年8月に開催されている市のイベント「日向ひょっとこ夏祭り」では、約2か月前から踊りの練習を繰り返し、祭りで踊りを披露している。 平成29年度は、紙粘土を使ってひょっとこのお面づくりにも取り組んだところである。 このような、地域と学校と連携した活動が評価され、平成25年度には、優れた「地域による学校支援活動」推進にかかる表彰(文部科学省)を受賞することができた。 塩見地区に子ども教室ができる前は、放課後に子どもを安心して預けられる環境がないために、入学する段階で、他の校区に引越しするケースも見受けられ、児童数の減少に拍車がかかっていた。 しかし、平成23年度に子ども教室が設置されて以降、子ども教室の活動が充実するにつれ、登録者数も増え続け、今では、塩見小学校児童数の3割以上が子ども教室を利用している。 日向市内全体の児童数が減少している中ブルーベリー葉収穫作業で、塩見小学校の児童数がここ数年は増加に転じているところである。 表2塩見小学校児童数の推移
※しおみっ子放課後子ども教室の児童は、その年度の登録者の合計 403(しおみ)弁ラジオ体操第一 地域住民の健康増進と塩見への一層の愛着を育むため、平成26年11月にラジオ体操第一を塩見弁にナレーションしたCDを制作した。 録音には、塩見弁の達人である、地元の鈴木孝雄さんと鈴木敏克さん(塩見の夕カ&トシ)がナレーター役を務め、レコーディングを2日間にわたって計5時間半かけた力作である。 このCDは、口コミで少しずつ広がりはじめ、地元のFMラジオでは、番組の中のリクエスト曲として「403(しおみ)弁ラジオ体操第一」が流れたり、県内テレビ局が体操の様子を生中継したことにより、当協議会への問い合わせが殺到し、これまでに約800枚のCDを、市内外に無償提供している。 また、関東や関西圏域に住む日向出身の方からも、“塩見弁が懐かしい”と、大変喜ばれている。 塩見地区内の野外イベントやスポーツ大会では、この403弁ラジオ体操第一で準備運動するのが恒例となっていて、ナレーションに合わせて体を動かすと、参加者から自然と笑みがこぼれ、会場の雰囲気も和むようである。 当協議会では、「方言も宝物」として、今後も普及に努めることにしている。 塩見ウォーク “ないものねだりより、あるもの探しをしよう!”ということで、毎年「塩見ウォーク」を開催している。 7回目を迎えた昨年2月のウォークでは、塩見地区内にある西郷軍の墓や、家畜の神様・馬頭観音の地などを見て回った。 塩見ウォークには、毎年、鹿児島県からまち歩き専門家の東川隆太郎さんをガイド役としてお招きし、コースを変えながら、塩見の歴史や文化を結び付けたお宝再発見を行っているところである。 参加者からは、「畑の間近を通って癒された」、「知らない歴史にふれ、ゆっくりのんびりウォーキングできてよかった」などの好評を得ており、参加者数が年々増えている。 市の施設を核とした活動 塩見地区内には、日向市の農産加工施設である「日向市農村交流館」があり、平成24年度から当協議会が指定管理者として運営を行っている。 この農村交流館を拠点に、地元の河川組合との共催による「塩見川かんきょう教室」や、親子で参加する「しおみ竹細工教室」、「高齢者ストレッチ教室」などを開催している。 また、ひょっとこ踊りが縁で、平成24年には、「日向ひょっとこ夏祭り」に、宮城県気仙沼市の九条(くじょう)小学校から児童と引率の先生の24名が参加され、祭りの翌日には、農村交流館において当協議会主催による、焼肉やスイカ割りなどの懇親交流会を開催し、夜は塩見小の子どもたちの家にホームステイして親交を深めた。 この他にも、農村交流館では、地元の芸術家による絵画展や写真展なども開催しているところである。 今後の活動について 今回のあしたのまち・くらしづくり活動賞受賞は、結成8年目にして大変名誉なことで、スタッフ一同感激し、大きな自信となった。 地域内には私たちの知らないお宝がまだたくさんあり、それを塩見内外に、伝え・広めることで、『塩見ファン』を増やし続けていく必要がある。今後も、この賞を励みに、地域の方々と楽しみながら、「安心して3世代が暮らせ笑顔あふれる塩見」づくりにまい進していきたいと考えている。 |