「まち むら」74号掲載
ル ポ

ホームページで活動を活性化
静岡県沼津市 駿河台自治会
 伊豆半島の西の玄関口に位置する沼津市。人口は約21万人、地方分権一括法でできた新しい制度「特例市」第一次指定に名乗りを上げ、昨年11月に移行した。静岡県東部の中心都市として、国や県の出先機関が集中し、商業・工業の面でも東部地区の中心と位置づけられている。若山牧水、井上靖、芹沢光治良といった著名な文人ゆかりの地でもあり、売り物の1つの沼津港の新鮮な魚を求めて、休日は首都圏から多くの観光吝か押し寄せる。
 駿河台自治会は沼津市の北の玄関口・沼津インターチェンジにほど近い場所にある。世帯数は750、人口は2千を超え、市内でも大規模な自治会に入る。以前から住んでいる住民の家の中に、真新しいアパートが目立つ。北には富士山、南には駿河湾を見ることができる環境に優れた高台の閑静な住宅地だ。


自治会内にパソコン部を立ち上げる

 駿河台自治会がホームページを作成したのは昨年夏。職場でパソコンを使う若い会員らが中心になって立ち上げた。継続的に運営していくため、「パソコン部」(河上幸二部長)という新たな組織もつくった。
 パソコン部の部員たちは「IT(情報技術)の時代。他の自治会に先駆けて、自分たちだけのホームページをつくろうと、大いに盛り上がった」と振り返る。パソコンの扱いに慣れた部員たちは、自治会費で新規購入したデスクトップ型パソコンが置かれた駿河台公民館に定期的に集まり、議論を重ねながら作業を進めた。
 ホームページは写真をふんだんに取り込み、気軽に楽しみながら見ることができるよう工夫しているという。5月末現在のアクセスは3600件以上で「予想以上の数字」と喜ぶ。
 本でいえば表紙に当たるトップページは自治会の位置や概要説明、自治会長のあいさつが並び、ここから自治会関連の各種団体のページやお知らせのコーナーに行くことができる。
 主な内容は、自治会の定例会合の議事録、地元消防団(沼津市消防団第25分団)の団員募集や活動報告、子供会の活動報告、会員以外の個人、団体も書き込みが可能な掲示板など多岐にわたる。自治会の活動報告も多彩で、写真コンテスト、絵画コンテストの入賞作品紹介など結果報告や講評、防災訓練のルポ風報告、地元学区の文化祭や夏祭りの報告と多くの活動を居ながらに振り返ることができる。全国の自治会ホームページや、自治会員が個人で開設したホームページヘのリンクも張り付けた。
 ホームページアドレスには地域の象徴でもある「駿河台公園」に巨大なタコの遊具があり、「タコ公園」と呼ばれていることにちなんで、「takoko−en」を採用し、トップページにタコ公園の写真を載せた。
 特徴的なのは各種団体に開放している点だ。例えば、目立つところに地元の少年野球チーム「沢田少年野球団」の団員募集がある。「このホームページを自由に使ってもらい、活動に生かしてくれれば私だちとしてもうれしい」と河上パソコン部長はいう。
 高嶋正司自治会長(68)は「駿河台自治会は以前からの住民に加え、転勤などで入ってきた新住民も多く住んでいる。アパートには会社の寮のように使われているところもあり、地域住民との接触は少ない。会費を払っていない人たちがホームページを見て、自治会活動に興味を持ってもらい、加入率アップにつながればと期待している」と話す。


自前のパソコン教室を開催

 5月13日、自治会パソコン部主催の初心者パソコン教室が開かれた。昨年暮れに地元郵便局主催のパソコンを使った年賀状作り教室が一度開かれているが、自前の教室開催は初の試み。「どれだけ反応があるだろうか」とのパソコン部員の心配は杞憂に終わり、下は小学校5年生から上は91歳のおじいちゃんまで「今までパソコンなんて触ったことのない」という15人が集まった。
 この日の目標の「お気に入りの写真入りカレンダー」の完成を目指して、教室は午後1時に始まった。文字通り手取り足取り、一つひとつを細かく指導。それでも「ダブルクリックって、どうするのかもう一度教えて」「先生、画面が動かなくなっちゃったよ」。7人の部員は大忙し。参加者は悪戦苦闘ののち、何とかカレンダーを完成させた。
 最高齢参加者の森本信二郎さん(91)は「世間を騒がしているパソコンとはどういうものか興味津々で参加した。操作は難しかったが、驚くことの連続で大変面白かった」と興奮気味。高橋明さん(80)は「もう、自由にマウスを操ることができるよ」と自慢げに披露する。教室が終わったのは終了予定を1時間以上過ぎた4時すぎ。「こんなに楽しいなら、パソコン買っちやおうかな」とにぎやかな声と笑顔があふれた。
 沼津市がこのほど実施したITに関する市民意識調査によると、パソコンを持っている世帯は44%で、前年調査時を3ポイント上回り、インターネットを利用している人は26%で、前年より11ポイント増と、IT化か着実に進展している状況が裏付けられた。
 欲しいと思う機器はデジタルカメラの32%が1位で、2位はパソコンの26%。デジタルカメラを現在持っているのは14%で、パソコンとデジカメがセツトとなり、今後急激に使用者が増えることが予想される。


周辺自治会にも波及効果

 その一方で、情報化進展で行政が力を入れるべき事業は、通信網整備で在宅福祉、医療への活用が35%、パソコン講習拡充など習得の場充実が34%、小中学校でのコンピューター教育充実が31%―などといった結果だった。市は市民のITに対する要望は今後さらに増えるだろうと予測する。
 駿河台自治会のホームページ立ち上げは、周辺自治会にも波及効果を与えている。金岡中部地区連合自治会が全体にITに熱心なことも一因だが、同様に自治会ホームページを作成した近くの自治会
長は「仕事でパソコンの経験があったので作ってみた。今のところは役員会の報告などにとどまり、駿河台自治会のように幅広い内容とは言えない。内容充実には一部役員にとどまらない幅広い住民の盛り上がりが必要」と語り、駿河台自治会を目標にしている。
 コミュニティ活動を担当する沼津市企画部地域づくり推進課は「政府の音頭取りでIT化か進み、沼津市のIT講習会も今のところ市民の人気が高く、順調な滑り出しをみせている。市のホームページヘのアクセスも多く、月2回発行の広報紙を袖う存在と同時に、市外への情報発信の貴重なツールとして機能している。各単位自治会でも、昔ながらの回覧板を使った紙での情報伝達に加え、インターネットを使った新たな情報チャンネルが表れたことは歓迎すべきことだ」と話している。
 駿河台自治会のHPのアドレスはhttp://www2.tokai.or.jp/takoko-en/