「まち むら」77号掲載
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大規模団地で高齢者を支え合う福祉システムを構築
神奈川県横浜市・特定非営利活動法人ふれあいドリーム
 横浜市戸塚区俣野町の「ドリームハイツ」では、住民有志による会員制の互助組織「ふれあいドリーム」が高齢者などの家事援助や介護・介助活動を進めている。1999年5月には特定非営利活動法人(NPO法人)の認証を取得。12月には介護保険の訪問介護事業者の指定を受け、戸塚区・泉区を中心とした介護保険事業にも取り組んでいる。


団地住民が高齢化する中で助け合いを

 ドリームハイツは、JR戸塚駅からバスで約30分の横浜ドリームランドに隣接して開発された大規模団地(23棟、約2270世帯)で、1972年に入居が開始された。
「入居当時は30代、40代が中心だったので、子どもを通じた住民の交流が活発でした。幼稚園が不足していたことから自主保育に取り組みましたが、それがこの地域の住民互助活動の始まりでした」と「ふれあいドリーム」副理事長の島津禮子さんは振り返る。自治会の中に幼稚園問題特別委員会が組織され、父母たちの運営による自主保育活動が進められたのをはじめ、74年から85年にかけて子どもたちの育成に関する様々なサークルが生まれたという。
 その後、子育てを終え、子どもたちが巣立っていくと、高齢者の問題や自分たちの老後が気になるようになった。自主保育などに関わった住民が中心となって「ドリーム地域給食の会」が生まれたのは、90年のことだったという。集会所に厨房を整備し、スタッフが食事をつくって高齢者に配食したり、集会所で会食する取り組みが始まった。この活動は現在も続けられている。
 さらに、今後を見据え地域での助け合い活動ができないだろうかという声が上がるようになった。
「入居してから20年あまり経った93年ころのことでした。私はちょうど管理組合の理事をしていましたが、管理組合理事や自治会の有志5人ぐらいで住民に呼びかけ、会員制の互助組織をつくろうということになりました。組織や規約、運営方法などは、さわやか福祉推進センター(現在、財団法人さわやか福祉財団)が作成していたマニュアルがありましたので参考にしました。準備会の説明会を開くと集会所に多くの住民が集まってきて、関心の高さを感じましたね」と島津さんは話す。
 ふれあいドリームの前身の任意団体「ドリームふれあいネットワーク」は、準備委員会を経て、94年7月に発足。ハイツ内の一部屋を事務所として借り、会員160人(利用会員75人、協力会員85人)、会員間のコーディネートや事務処理などを行う運営委員15人でスタートを切った。


「お互い様」が活動の基本精神

 ドリームふれあいネットワークは、入会金3000円、年会費2000円で発足当初から変わっていない。サービス内容は、▽掃除、洗濯、買い物、食事づくりなどの家事サービス、▽簡単な介護・介助、入浴介助、車椅子介助、外出介助、病院への送迎、▽話し相手、朗読、代筆、日曜大工、力仕事など。また、高齢者向けサービスだけでなく、ベビーシッターや留守番、産前産後の手伝いなど幅広いサービスを用意しているのも特徴といえる。
 サービスを受けたい利用者(利用者会員)は利用したいサービス項目を、一方、サービスを提供できる協力者(協力者会員)は協力できる項目と活動可能な時間帯を登録しておく。利用者会員からサービスを受けたい旨の連絡が事務局に入ると、事務局はその時間に該当するサービスが提供できる協力者会員に連絡し、サービスを提供していくという仕組みをとっている。
 利用と協力の両方を登録することも可能で、実際両方登録している会員も多いという。「お互いさまというのが、この活動の基本的な精神です」と島津さんは説明する。
 サービス利用料は1時間800円で、100円は事務費、700円はサービスを提供する会員への謝金としていたが、昨年12月からは事務費分の徴収をやめ、サービス利用料を1時間700円とした。
 160人でスタートした会員数は、その後200人前後で現在まで推移している。利用会員の方が多く、50代〜60代が中心だという。
「活動ができる5〜6キロメートル圏内を範囲としていますので、隣接する泉区、藤沢市などにも会員がいます。自主保育から始まり、住民が年を重ねていくに伴い、高齢者への取り組みへとシフトしていったのがこの地域での自主福祉活動の特徴ですね」と島津さんは話す。


会員の要望で介護保険事業にも参入

 その後、介護保険導入を控えるようになると、介護保険もドリームふれあいネットワークで利用したいという声が利用会員の中から上がってきた。理事会内で検討した結果、住民同士の助け合い精神を根底とし、地域に根ざしたきめ細やかな高齢者福祉を進めるために、介護保険に参入することを決めた。
 99年5月にNPO法人の認証を取得、「ふれあいドリーム」と名称を変更し新たなスタートを切った。同年12月には神奈川県から介護保険の訪問介護事業者の指定を受け、2000年4月から介護保険に基づく訪問介護事業を開始した。サービス内容は、身体介護、家事援助で、24時間対応のサービス体制をとっている。
 現在、島津さんと管理者の原章さん、サービス提供責任者の小松泉美さんの常勤スタッフ3人で事務局を務め、登録ヘルパーは23人。戸塚区と泉区をサービス提供地域としている。
「ケアマネジャーはいませんが、ふれあいドリームの活動を耳にしてサービス提供を申し込んでくる高齢者も多く、介護保険事業は着実に拡大しています」と島津さん。現在の利用者は約50人で、月約600時間のサービスを提供しているという。
 従来からの会員制の互助活動は「ふれあい活動」と称して継続するとともに、横浜市からの委託事業にも取り組んでいる。
 また、各種ヘルパー研修や「ふれあいコンサート」「バスハイク」の開催に加え、自治会のまつりにも積極的に参加し、地域住民との交流も深めている。


地域で支え合う福祉へ向けて

 では、今後の活動に向けての課題は何か。島津さんは次のように話す。
「事業拡大に伴いスタッフを増やしたいが、安定的な運営を考えると安易に増やせないのが悩みのひとつ。NPO法人に対する税制も考えてもらえればと思います。税金が免除になれば、それを地域に還元していけますから、サービスの充実が図られます」
 現在、ドリームハイツ内では、NPO法人「いこいの家・夢みん(むーみん)」(96年発足)が、高齢者が気軽に集まれるサロンを開き、ミニデイサービスを実施している。
 さらには、住民誰もが気軽に集まり交流できるコミュニティハウス開設の検討も進められているという。
「敷地内に建設できないか検討中です。建設資金の問題もあって簡単には実現できないかもしれませんが、完成すれば高齢者の閉じこもり解消にも寄与していくと思います。また、将来的にはグループホームのようなものにも取り組んでいければいいですね」と島津さん。地域で支え合う福祉活動の夢は大きくふくらんでいる。