「まち むら」82号掲載 |
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民・民協働で生み出したリサイクル製品「すみだっ子」 |
東京都・墨田区 東京都リサイクル事業団体連合会すみだ/墨田区生活学校連絡協議会 |
ヒット商品「すみだっ子」 「せっかく回収されても、再利用され、消費者に使われなければ意味がない」との消費者のひとことがきっかけとなって、消費者とリサイクル組合が協働して、再生のトイレットペーパーや洗濯石けんの普及に努めているのが東京都墨田区のリサイクル事業者。平成11年10月に誕生したトイレットペーパー「すみだっ子」はこれまで90万ロールが売れ、リピーターも定着し、1か月平均2万ロールがコンスタントに消費されるヒット商品になっている。また、昨年からは、廃食油を利用した洗濯石けんの販売も始まった。 ことの発端は、平成11年5月に開催された墨田区内のリサイクル事業団体の総会の席に墨田区生活学校連絡協議会会長の中島マサさんが招待されたことにはじまる。リサイクル事業団体連合会すみだ(通称 R団連)は平成8年9月に発足し、区内の事業系再生可能品回収業者26社が加盟している。 その席上、あいさいつに立った中島さん、「ただ集めるだけでは、リサイクルとは言えない。再生品の消費方法まで考えなければ」と発言した。あわせて「できることからはじめよう」と続けた。生活学校連絡協議会では、「ものを大切にしよう」の合い言葉のもと、不用品・廃品回収の活動を長年にわたりつづけてきた。しかし、平成10年前後、古紙がダブつき、有効に再利用されていない状況に歯がゆさを感じていた。そんな折りの発言でもあった。 この言葉に動かされたR団連は立ちあがった。その行動はすばやかった。 まず、墨田で集まった古紙からトイレットペーパーを作ってくれる製紙会社を探しをはじめた。いくつかの会社と交渉の結果、静岡県の製紙会社が製造を引き受けてくれた。この製紙会社とR団連との間では、@最初の5万ロール分の代金をR団連が前払いすること、Aトイレットペーパーの包装容器であるダンボールやビニール袋の費用などもR団連が負担するという条件がつけられた。R団連は、この経費を加盟企業が分担して捻出した。このようにR団連が積極的に対応した理由をR団連の代表の畔上常夫さんは、次のように語っている。「生活学校のみなさんは純粋にボランティアでやっている。私たちはリサイクルと銘打った企業なのに、リサイクルをボランティアだけに任せておいて良いのか」という気持ちだったと、その時の思いを語っている。 製造会社が決まった段階で、R団連、生活学校、東京商工会議所墨田支部などがあつまり、名称や価格についての話し合いが持たれた。名称は、みんなに親しまれる下町すみだのイメージを表すもので「すみだっ 子」に決まった。トイレットペーパーのロールをイメージしたキャラクターも決められた。値段は“再生品は高い”というイメージを払拭するために、1袋12ロールで280円で販売することで合意された。さらに1ケース(8袋96ロール入り、価格2,200円)以上の購入者には、R団連が無料で宅配することも決まった。 また、生活学校では、区内の各生活学校の委員長が集まり、PR部門を受け持つことを決定した。 「すみだまつり」で5万ロール完売 平成11年9月、第一陣の5万ロールのトイレットペーパー「すみだっ子」ができ上がった。生活学校連絡協議会では、古紙回収で得られた報奨金ですみだっ子を購入し、祭礼縁日で住民に贈呈したり、各町内を巡回し、すみだっ子のPRをした。また、地元のケーブルテレビの取材を受け、すみだっ子の誕生の経緯を話し協力を呼びかけた。この放送は一週間連続して放映された。さらにNHKなどのマスコミにも紹介された。 平成11年10月10万人以上が訪れるという「すみだまつリ」で、すみだっ子が販売された。2日間のまつりの期間で、5万ロールのトイレットペーパーは完売されたという。 現在、すみだっ子の販売は、一部、生活学校の運営委員長宅などで販売しているのを除き、多くはR団連の畔上さんたちがボランティアで請け負っている。前述のように1ケース以上の申し込みを受け、仕事の合い問や集団回収の回収日に届けたりしている。申し込み先は、自治会・町内会、企業、さらには個人で、今 年だけでもおよそ1500件の申し込みがあるという。個人の中には、数家庭が一緒になって申し込むケースもあるという。その販売量は、平成12年は20万ロール、平成13年は30万ロール、14年も30万ロールを超え、売り上げも着実に伸び、畔上さんは「すっかり定着した」と話す。 すみだっ子の大ヒットで少しではあるが収益も上がるようになった。その利益で、4月には区内の小学生(1、4年生)に連絡帳ノートを、保育園児には自由帳ノートをそれぞれプレゼントし、喜ばれている。 廃食油から作られた洗濯石けんの販売にも着手 すみだっ子の第2弾として取り組んだのが、洗濯石けん。墨田区では、昨年5月から廃食油の回収をはじめた。公共施設や保育園、さらに生活学校の委員長宅など28か所を拠点にして年間12トンの廃食油を回収している。回収した廃食油は地元企業に提供し、ディーゼル燃料に再生されている。しかし、生活学校連絡協議会やR団連では、区民にリサイクルという意識を持ってもらうために、毎日使う洗濯石けんなら、その効果は大きいのではないか、また、蛍光増白剤などを使わず、環境にもやさしい洗剤を広めていくことも視野にいれて、平成14年10月から洗濯石けんの販売をはしめた。ここでも、トイレットペーパーと同様の販売システムがとられた。廃食油の回収、再利用で大きな実績を持つ区内の石けん企業の協力で誕生した。当面、2万箱(1箱1.8キログラム入り、700円)の販売をめざしている。 さらに、小人数世帯が多い墨田の実情に合わせて持ち運びに便利な、600グラム、900グラム箱も用意している。また、そのパッキング作業を区内の身障者施設に委託している。 民・民主導が成功のカギ すみだっ子が成功した背景について、畔上さんは「このような活動では、行政が音頭をとると、どうしても行政に頼ってしまい、一般には広がらない傾向かあるようだが、墨田では、リサイクル事業に携わる私だちと消費者である墨田区生活学校の主婦がおなじ目線で力を合わせて取り組んだ―民・民主導―結果が良か ったのでは」と分析する。そして「これで完結ではなく、自分たちでできることをこれからも、智恵と力を出し合って、協働して、限りある資源を大切に子どもたちに残すために努力を憎しまず頑張りたい」と続ける。 |