「まち むら」92号掲載
論 文

これからのコミュニティの処方箋(第11回)
コミュニティプランをつくってみよう!
伊 藤 光 造((株)地域まちづくり研究所所長)
 皆さんの地域には将来にむけたプランってあるでしょうか? プランはないにしても、何かのときに、こんな地域になるといいなとか、こういう暮らしを実現したい、地域はこうでなくっちゃ…などと考えられたことがあると思う。
 あるいは毎年の活動に追われてそれどころではない、とおっしゃるかもしれない。しかし三年に一度、あるいは五年に一度、自分たちの地域はどうあるべきか、そのために何をすべきか、など議論してみるのは決して無駄ではないはずと思う。毎年定番の活動も状況が変われば見直さなくてはいけないかもしれない。


高松市のコミュニティプランづくり

 実はこの十一月と十二月に二回、高松市に講師としてお伺いした。
 高松市では、自治会の加入率が下がるなど、自治会活動だけで地域の暮らしを支えることが厳しい状況となっている。また一方で周辺六町との合併も進んでおり、新たに加わる地域も含め近隣の暮らしを支える仕組みを整える必要性が高まっている。そのようななか自治会を中心としたコミュニティづくりを進めようと、頑張っておられるところである。
 高松市のコミュニティづくりは、全市でコミュニティづくりを導入しよう、そのため各地区でコミュニティ協議会を立ち上げ、まず何をしたらいいか、コミュニティプランをつくってみよう、というものである。そのためのリーダー研修に呼ばれたわけである。
 現在は市内三十五地区あるなかで、三十一地区で組織が設立され、六地区でプランが策定されている。


プランづくりの大切さ

 コミュニティ協議会などがなくても、連合自治会などにおいて、地区の暮らしを充実する、あるいは地域の安全・安心を確保する、などを目的にプランをつくってみることが、必要と思う。
 なぜなら、地域の問題課題で、年度をまたがって活動を充実させる必要があることが増えてきている。防犯や防災もそうであり、高齢者を支える、環境を維持するなどもそうである。
 また従来から行なっている、体育祭、文化祭なども、地域の変化に対応し、徐々に変えていく必要もある。一度、関係者で地域の状況を改めて見直し、活動の現状を見直してみることが大切である。
 さらに何より、地域の暮らしをよりよくしていくため、みんなで共有の目標を持つことが大切だと思う。


高松市・川岡校区の例

 川岡校区は平成十五年九月にコミュニティ協議会を立ち上げ、一年六か月をかけ将来の地域づくりを討議し、「自然を大切に 渡り鳥飛来地 ふるさと川岡」を目標とするコミュニティプランをまとめた。
 内容は五本柱、それぞれ部会が対応している。内容は具体的で、それぞれの方針ごとに短期(〜三年)中期(四〜十年)、長期(十一年以上)の実施プログラムもまとめられている。当面、短期にあげられた事業を推進することとなるが、その項目が五十六にもなっている。もちろんすでに行なっているものも相当数あると思うが、それにしても頑張った内容となっていることがわかる。これらが実施されれば頼もしく素晴らしい地域となるであろう。


高松市川岡校区コミュニティプラン(抜粋)
          (平成17年3月)

○明日へのまちづくり (広報部会)
 ―地域探検、アンケート調査など12項目
○健康で生きがいあるまちづくり (健康福祉・福利厚生部会)
 ―健康体操、健康ウォークなど13項目
○自然に優しいまちづくり (環境部会)
 ―不用品交換会、廃油石鹸づくり、花いっぱい運動など16項目
○住みよいまちづくり (総務・生涯スポーツ部会)
 ―自主防結成、リーダー養成など12項目
○みんなで育てよう川岡っ子 (青少年育成・安全部会)
 ―防犯パトロール実施、防犯マップ作成、子どもの居場所づくり、コンサート、防犯灯設置など13項目
 《施策例・項目数は短期に係るもの》


ワークショップをやってみよう

 ところで、プランづくりの際、みんなが沢山意見をだし、プランの内容を充実させるには、ワークショップ手法が有効である。
 ポストイットカードを使って個々の意見を書きとめ、模造紙の上にならべてまとめあげてゆく。声の大きい人、喋りが達者な人でなくても意見が出せるし、まとめかたもみんなで確認しながらできる。最初はやりかたのわかった人にアドバイスしてもらったほうがいい。が二、三回経験してなれれば、なんとかなる。


行政主導型の計画策定も行われている

 実はコミュニティプランは、昨今始まったことではない。ハード面のまちづくりの系譜では、昭和四十六年から高知市でモデルコミュニティ地区指定を契機に取り組まれた「コミュニティカルテ」「コミュニティ施設計画」などを始めとし、様々な都市でコミュニティ計画策定は行なわれている。
 また市町村の総合計画のなかで地区別計画が策定されるケースもある。あるいは都市計画マスタープランの地域別構想のなかで地区の計画が立案されるケースなどがあり、皆さん方のなかにもこれらの計画策定に参加された経験のあるかたもいらっしゃると思う。
 しかしこれらの行政主導型で策定された計画は、やはり行政の目標にはなるが地区住民の目標には成りえていない場合が多い。


自前の計画が大切

 計画は、つくる以上“絵に描いた餅”ではしかたがない。その意味で計画はやはりお仕着せではなく、自前で編み上げたものである必要がある。つまり、地区の住民が主体となって、地区住民のために、何をなすべきか、あるいはなにができるか、という計画策定でないと、うまく機能しないのではないだろうか。
 その活動の卓越性で全国表彰もされている、日立市塙山学区住みよいまちをつくる会では、平成六年からコミュニティアクションプランとして「さんさん計画」をまとめ、この実践を通じ大きな成果をあげている。内容は同会のホームページで詳しく紹介されているので是非参照されたい。


行政の支援も大切

 地区住民が主体となって計画づくりに取り組む際、やはり行政の支えがあるのとないのとでは大きく結果が異なる。
 高松市では、組織づくりと計画策定に二年間で最大四〇万円の補助金が出る。また計画策定に関する研修会の実施や、市の職員が地域まちづくりサポーター(無償ボランティア)となって活動を支えるという仕組みも整えられている。地域の主体性を尊重しつつ、このような支援が受けられると、計画策定への強い動機付けにもなるし、策定の過程でも相当に心づよいことであろう。


計画が夢を育み人を育てる

 自分たちの地域がこんなふうになるといい、という夢をもつこと、そしてその夢を言葉や絵としてあらわし、共有すること、これが大切である。また、みんなで夢を語ることにより、自分たちの気持ちを育て、さらには地域の担い手を育てることになる。是非あなたの地区でも計画づくりに取り組むことを考えてみて下さい。