「私たちの生活学校」130号掲載
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若いお母さんを支援する「子どもとママのサロン」を開設
栃木県・宇都宮市 富士見が丘生活学校
「孤独な子育てをしている若いお母さんをなんとか手助けしたい」と、『子どもとママのサロン』を開設した栃木県宇都宮市の富士見が丘生活学校(代表・柚木正子さん)では、メンバーが子どもの遊び相手になるかたわら、若いお母さん同士やメンバーとお母さん方が雑談をしたりするなかで、子育ての支援を行っている。


若いお母さんたちに仲間づくりの場を提供する

「この団地から幼児虐待などの事件を出したくない。こんな思いから『子どもとママのサロン』を始めました」と同サロンの中心的メンバーの一人、大手弘子さんは言う。
 サロン開催の当日、20坪程の会議室では、カーペットを敷いた床の上で、数名のメンバーが子どもたちと遊んでいる。そのかたわら、別のメンバーがお母さんたちと一緒に玩具づくりをしながら話しこんでいる。
 子どもとママのサロンは、同校が地域の自治会館を会場として、毎月1回、第2水曜日の午前10時から11時半まで開催しているもの。
 子どもたちが保育園や幼稚園に入るようになれば、その関係でお母さん同士の横のつながりも、さらに地域の人たちとのつきあいもでてくるだろう。しかし、未就学児のお母さんたちの中には、そういう仲間もなく、気軽に相談できる相手もなく、一人で悩んでいる人もいるのではないか。このような若いお母さん方に、「仲間づくりの『場』を提供しよう」そして「私たちが、気軽に相談できる相手になろう」というねらいで開設してから、ちょうど1年を迎えた。参加対象にしているのは、地区に住む未就学児とそのお母さんたちが中心。


子どもから元気をもらっている

 このサロンをはじめるときには、メンバーたちは、近くにある教会に併設されている有料のサロンなどを見学し、サロンのやりかたに検討を加えていった。このなかで、メンバーたちがもっとも心がけたのは「こうしなければ」という規則や強制をつくらないこと。サロンを開いている時間は10時から11時半までとしているが、お母さんたちは遅れても、途中退席しても構わない。都合がつく範囲で来てもらうようにしている。これまでの参加状況をみると、平均で6組程度、少ないときで4組、多いときには、組の参加があった。会場の大きさを考えると組程度がちょうど良いという。ちなみに参加費等は一切とっていない。
 当日の子どもたちが遊ぶために用意するおもちゃは、メンバーたちが自宅から持ち寄ったもの。また、お母さんたちと一緒につくる玩具の材料も廃品などを使い、できるだけお金をかけないようにしている。例えば、フィルムのプラスチックケースを二つつなぎあわせてのミニマラカス、紙皿に折り紙のお雛様を張りつける、牛乳パックの空き箱二つを重ねて作るおもちゃといった具合。とくにミニマラカスは子どもたちには大好評だったという。
「子どもから元気をもらっている」と大手さんが言うように、生活学校のメンバーもむしろ楽しんでいるように見受けられる。サロンの始まった昨年の5月にはハイハイをしていたという颯太君は、今では、「おはようございます」と大きなあいさつをしたあと、CDの音楽に合わせて踊ったり、ビーチボールを投げたり、一時も休むことなく飛び跳ねている。その動く姿にメンバーは眼を細める。


まず顔見知りになること

 難しさもある。
 柚木さんや大手さんは異口同音に言う。「こういったサロンに出てくるお母さんたちは良い。むしろ本当はこのような会に出てこない人たちを何とかしたいのだけれど…」と。
 同校のある富士見が丘地区は、昭和30年代後半に入居が始まった戸建の団地、現在1,200世帯ほどの戸建住宅と100棟ほどのアパート・マンションがある。ここで問題になるのは、ご多分に漏れずアパート・マンションの住人たち。この人たちの多くは自治会にも入会しておらず、家族構成さえつかむことができない。この中には家に閉じこもって、一人で子育てに悩んでいる若いお母さんもいるのではとメンバーは危惧する。そして、そのような人たちにこそ参加してもらいたいというのがサロンを始めたときの真のねらいでもあった。
 しかし、この人たちに大上段に振りかぶった依頼をしても参加はなかなかしてくれない。やはり口コミが必要と積極的に声かけを行っている。例えば、バス停で、道路で、スーパーマーケットで、子ども連れの若いお母さんにあった時に声をかける。今、参加しているお母さん方の中には、このようなメンバーの口コミによって参加すようになった人もいる。あわせて、自治会の掲示板や、郵便局、銀行などにもポスターを張らせてもらい、お誘いしている。


若いお母さん方に地域の問題に関心を持ってもらうことも

 子どもとママのサロンには、もう一つのねらいがある。来られた若いお母さんがたの雑談の輪の中に入り、地域の問題などを話す中で、生活学校の活動に関心を持ってもらうこと。そして、さらにいえばメンバーになってもらうということ。まだ、若いお母さん方でメンバーになった人はいないが、お孫さんを連れていつも参加している半田美智子さんが、新しく生活学校のメンバーになった。この日、半田さんは、「来る途中、子ども連れのお母さんにあったので、『サロンを開いていますよ』と声をかけてたわ」とメンバーに話していた。
 開設して1年、これからも「このサロンを、そして若いお母さんへの声かけを気長に、そして根気強く続けていこう」とメンバーは話し合っている。