「私たちの生活学校」135号掲載 |
ル ポ |
買い物で社会を変えよう |
栃木県・黒磯市 黒磯市生活学校 |
京都議定書が批准され、温室効果ガスの一層の削減が迫られ、地球規模の問題となった環境問題に対する市民の意識は高いにもかかわらず、具体的な行動には結び付いていないのが実情だ。買い物という日常的な行動を通して、環境問題への意識を行動に移し、自分たちの生活や身近な店舗、さらには企業活動や経済社会を環境に配慮した方向に変えていくことをねらいに、栃木県黒磯市の黒磯市生活学校(代表・大内康子さん、メンバー70人)は、買い物で社会を変えようと、問題意識と行動のズレを埋める活動をすすめている。 店舗の環境配慮度を調査 昨年5月に食品リサイクル法やグリーン購入法について学習したのに続いて、7月には買い物やエコライフを実践するための参考にと、市内のスーパーなど15店舗を対象に、環境に配慮した製品がどの程度売られているかなどの環境配慮度の調査を行なった。 調査項目は「詰め替え商品を扱っているか」「再生紙製品を扱っているか」「環境保全型商品のコーナーがあるか」など。まず店長に聞き取り調査を行ない、そのあとメンバーが2人1組になって売り場を回って確認した。 調査の結果では、@詰め替え商品はシャンプーで14店舗、台所洗剤で13店舗とほとんどの店舗が取り扱っていた。シャンプーは商品の種類も増え、「これが詰め替え容器?」と思うほど買いたくなるものもあった。A一方、ビール、酒、牛乳などのリターナブルビンを扱っている店舗は減少し、取り組みが後退しているように思われた。B古紙100%のトイレットペーパーを扱っている店舗は6店舗。なかには古紙100%のトイレットペーパーを目玉商品として扱っている店もあった。また、値段もバージンパルプものよりも安い店もみられた。C環境保全コーナーについては、エコ商品などの特設コーナーを14店舗が設置していたものの、環境情報を提供するコーナーがあるものは4店舗にとどまっていた。減農薬、地場野菜コーナーを特設する店舗もみられるなど厳しい経営環境にありながらも環境に配慮した店舗の多いことが分かった。 環境でパネルディスカッション 10月には、スーパー、食品会社、JAに消費者が加わり、「買い物」で社会を変えようをテーマにパネルディスカッションを開いた。とくにBSEの発生、無登録農薬の使用、輸入野菜の残留農薬など食品の安全性で問題が起こっていることからJAに出席してもらった。 スーパーは「レジ袋削減対策としてスタンプ制を行なっているが、消費者の参加率は数%に過ぎない。マイバッグ持参運動を推進するにはレジ袋の有料化が最良の策だと思う。節電、節水に心がけ地球の温暖化防止策に事業ぐるみで取り組んでいる」。食品会社は「ISO14001を取得した。地球環境保全を経営の最優先課題と考え、省資源、省エネルギー、リサイクル率アップによる廃棄物の削減に積極的に取り組んでいる」と説明した。 JAは「国産の農産物、農産加工物を食べ、日本の農業を活性化することだ。生産方法を自分で確かめられる地域の農産物を食べることも大切」と地産地消を薦め、「過度の有機信奉も考えものだ。有機肥料を必要以上に使用すると硝酸塩汚染の原因になる。環境全体を考え、持続可能な農業にするためにも近隣の農家との信頼関係が何よりも大切だ」と話した。 また無登録農薬対策を質した意見には「規模拡大や兼業により省力に迫られ、無登録農薬を使用してしまった。その結果、食の安全への信頼を失ってしまった。農家への指導を強めていくが、信頼回復に10年以上かかる」とし、残留農薬についても「WTO体制のもとに残留基準が緩和された。食品輸出国の圧力で、わが国で使用が認められていないポストハーベスト農薬を、食品添加物扱いで許可してしまったことが輸入野菜の残留農薬問題の元凶だ」と話した。 会場からの「地場のもの、旬のものをもっと販売してほしい」との声に、スーパーも「地場や路地ものはエネルギーをあまり使わない。これからも地場野菜や旬のものの販売に取り組みたい」。さらに「リターナブル容器の取り扱いを増やしてほしい」との声にも「リターナブルビンの商品をできる限り多くしたい」と答えた。 環境に配慮した店を応援しよう 後日、メンバーがスーパーを訪ねると、野菜と果物がトレー販売から裸売りになり、ビンビールも増えていた。地場野菜も見やすいところに置いていた。 黒磯市生活学校は、環境問題をテーマにこうした消費者、事業者、行政がそれぞれの立場で話し合うパネルディスカッションを過去2回開いてきた。話し合いを通して、事業者は積極的に省エネルギー、省資源に取り組んでいることが分かった。問題は消費者にある。環境に配慮した買い物をすれば、このスーパーのように環境対策に積極的に取り組む店舗を応援することになるのに、現実は、まだ多くの消費者が環境に配慮した買い物をしていない。「もっとグリーンコンシューマーを増やしていきたい。地域レベルで事業者と消費者が連携して、環境に負荷の少ない商品を手に入れられる店を育てていきたい」とメンバーは言う。 黒磯市生活学校では、店舗の環境配慮度チェックの結果やグリーンコンシューマーについて模造紙にまとめ、市の「消費者まつり」でパネル展示して、「グリーンコンシューマーが増えれば社会が変わる。買い物で社会を変えよう」と市民に呼びかけた。また、どんな商品が環境に負荷が少ないのかなど、買い物の参考になる「買い物ガイドブック」の編集発行を考えている。 |